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TITANE/チタンのMOEのネタバレレビュー・内容・結末

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

【“お前が誰であろうと、愛してる”】
食人ガールから金属姐さんへ。
デュクルノー監督、超えてきました。
想像以上に変態、そして想像以上に愛が深かった。
アバンギャルドが過ぎる描写のウラには、とってもデリケートで巧妙なストーリー構造。
まさに心地良い心地悪さの極致。

【超絶クールなお姐さん祭り】
カーダンスシーンでKillsの”Doing It to Death”の前奏流れ出した瞬間、テンションブチ上げ。滑り出しからジェットコースターやん。監督のセンスがゴールド。
本当にあんなショーがあったら、一瞬でハマるわ。(『コヨーテアグリー』初見時と同じ気持ち)
速攻アレクシアに貢ぐ自信あるわ。

【サイコパスmeetsラブ】
え、シリアルキラー!?あ、そういう系なんや。前情報全く入れずに観たもんだから、最初から意表を突く展開が色々あって、スリラー的にも非常に楽しめる。
“サイコパス”って言葉が劇中でメンションされることはないけれど、インタビューで監督もアガトもアレクシアはサイコパスと表現していたので、断定させていただきます。

【”破壊者”から”創造者”へ】
愛を破壊することでしか生を感じられなかったアレクシアが、孤独なヴァンサンとの擬似父子関係を通して、段々と愛に屈していく様が秀逸。
まさに他人の死によって生かされていた女が、最後には自身の死によって新たな生を創造する。
この構造がトレヴィアン。

アレクシアやヴァンサンの心情描写の変遷がとても丁寧で、一見人を寄せつけないキャラクターに対する感情移入を容易にしてくれている。
破壊の裏には、愛への渇望がある。
“アドリアンとヴァンサン”という父子としての血の繋がりではなく、”アレクシアとヴァンサン”というあくまで孤独な個人同士としての、魂の繋がりはストンと腑に落ちる。
いわゆる茶番的な家族ごっこを心から求めてしまうあたり、2人は欠けたピースを補い合うというか、共有していたんだと思う。

生々しい肉体の痛みが、犠牲者たちからアレクシア自身にシフトチェンジしていくリアル。

まさに別人に転生することで、新たな生に出会い、未来を託し死にたどり着く。
最終的な肉体からの”解放”がもたらすカタルシスの極みたるや。

【ハンパない努力の結晶】
役者陣の渾身の肉体改造にも注目。文字通り、撮影に合わせて徹底的に改造したそうで、役者魂半端ないっす。
監督への信頼の厚さがビジバシ伝わってくるわ。

アガット・ルセルの鮮烈デビューは必見。超スマートなヒッチハイクのシーンがツボ。所作がしなやかで、とにかく美しく、冷たい金属に覆われた脆さの体現も素晴らし過ぎた。

インタビューで、監督は「RAWを超える作品を作らねばならない、というプレッシャーがとにかく凄かった。一年間まるまる机に座って、一言も書けない時もあった。」と仰っていて、今作は5年間の結晶の塊なんだと思うと、畏怖の念を感じます。

ブラボー!!!!
これからは、デュクルノー監督のこと、“飢えと肉体の魔術師”と呼ばせていただきます。
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