Koshii

TITANE/チタンのKoshiiのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.7
いつもなら、鑑賞後すぐに映画ノートにメモするのだが、その余りの衝撃に僕の脳みそは「一旦休め!」の信号を送り、何事も無かったかのように映画館を後にした。家に帰り、ご飯とお風呂を済ませ、再びこの作品に向き合う。

僕の脳みそが偉かったのは、「何が何だか分からないがパンフレットは買っとけ」と上映後にちゃんと伝令していたことだろう。(パンフのデザインめちゃオシャレでした!)

ということで鑑賞してからしばらく時間が経った今ようやく執筆しているのだが、一度逃避してやっと整理がつくような、凄まじい映画体験だったと改めて感じた。

以下、ネタバレを含みます。












『TITANE』
無機質な物質とは対称的に、人間という生命体を生々しく切り取った作品。


ぶっとんだ設定と、怒涛の展開の数々。それらは全て頭を抱えるほど衝撃的なのに、なぜか清々しく、キュートとすら感じてしまう。オシャレな楽曲と、刺激的な画がアレクシアの人生を効果的に彩っていたことがその要因だろうが、加えて、彼女の持つ妖艶さの中に〈幼さ〉を感じ、その危うさがそういった可愛らしさに繋がったのかもしれない。


本作品の本質は、個人的な解釈で言えば、〈親子愛〉。大事なネジがすっぽりと抜けてしまった二人が出会うことで、異質だとお互いに理解しながらも、親子のような関係へと深まっていった。そこで誕生した愛を、親子愛として信じ込まなければ、全てが崩壊してしまうという儚さ。

救いの無かったアレクシアとヴァンサンにとって、二人の絆は偉大だったのだろう。
ラストシーンで出産したアレクシアの子供は、もはやヴァンサンの子供でもあったようで、一時的なものかもしれないが、救いのあるエンドだったのではないかと思う。


頭蓋に嵌められたチタン。異質物と人体との融合。逃走と逃避。セックス、ドラック、ロックンロール。妊娠と出産。
新たな命の誕生が、これからも彼らにとって大きな救いとなることを祈って。

追記 最も恐怖を感じた場面は、ヴァンサンがアレクシアに向かって「お前が誰であっても俺の息子だ」と話すシーン。
狂気的な人間が冷静さを見せる瞬間。
さんざん痛ましい描写があったにも関わらず、ゾワッとしました。。
Koshii

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