ShuheiTakahashi

TITANE/チタンのShuheiTakahashiのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.7
痛さの伝え方は流石。
痛すぎました。

父に愛されずに育った主人公。
父とドライブしてるオープニングで、キャラクターと関係性を見せる。
車の滑走音を延々と続ける主人公、五月蝿いと思いながらも構わず車のステレオの音量を上げる父。
構われないことに苛立ち、父が座る運転席を後ろから蹴る。
苛立ち声を荒げる父。
シートベルトを外し席を立つ主人公を止めようとし、事故に。

ただ構われたい、父と関係を築こうとしていただけなんだろうけど、父がそれを拒否し続けている。
興味がないというより、娘に恐怖を抱いている印象。

そして事故による手術で、頭にチタンプレートを埋められる主人公。
大人になり、車の前でダンスをする主人公。
迫ってきたファンの耳を簪で串刺し。
印象的だ。
あんな風に本当に死ぬかはわからないけれど、めちゃくちゃ画力がある。

車とセックスするシーンも印象的。
妊娠してるとわかり、簪で子宮を刺そうとするシーンは痛すぎた。

そして次々と殺していく主人公。
殺し方が皆えげつない。
ずっと埋まらない空白、寂しさを殺すことで一時的に満たしているのかな。
殺したあとは良い汗かいたーみたいな。

たくさん殺したあとは、汚れた服を燃やす。
そのまま両親も殺す。

海外に出ようとするも既に指名手配。
髪を切り、染め、眉を剃り、鼻を折って、胸と妊娠中のお腹をテーピングで押さえつける。
行方不明中の男になりかわり、その父のもとで暮らし始める。
最初はすぐに逃げ出そうとしたが、逃げ出す先も見当たらず、そこに住み着く。
最初は関わろうとしなかったが、父の息子に対する歪んだ愛を受け続けて、執着され続けて、主人公の歪んだ空白が寂しさが埋まっていく。
歪な形同士が、綺麗にはまる。
老いに逆らうために薬を打ち続ける父。
今にも生まれでようとお腹の中で動く胎児。
今まで死と接してきた主人公は、生を渇望する命と出会い、変わっていく。

自分の子も慈しむようになり、父も愛するように。
家族を初めて知る主人公。
生きたいと初めて思ったのではないか。

命を賭して子を産み、父に託す。
父は生きがいを受け取る。
傍から見たらどんなに間違いだろうと、当人たちが救われていれば良いのだ。


ただ、チタンプレートを埋めた主人公である必要はあったのか少し疑問。
見た目はとても印象的で、素晴らしい。
黒い金属質な液体が体から出たり、お腹がチタンになっていたり、めちゃくちゃ最高。
けれど、チタンでなくてもこの話は作れそう。
どんなに圧迫しても子宮を傷つけても、
動いても流産しない理由のためにチタンなのか。
設定を無理につけなくても、別のところで面白さを作れる監督だと思う。
チタンがあることで、ずっとチタンプレートによる驚異的な能力とか、子どもは車と人のミックスなのかとか、違うジャンルの話を想像してしまった。
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