このレビューはネタバレを含みます
狂人の真似をする凡人程痛々しいものはない。がなりたてる声がただただ大きいだけ
過激な設定に覆い隠された「変化」や「受容」などシンプルな人間ドラマに見ごたえはなくはなかったが、いかんせんそこに至るまでがただ過激かつ陰湿なだけで面白味も必然性も無く、客寄せ以上の意味をなしていない。フェチズムに興味が無くて作ったみたいな絵ばっか。
時間や場所が目まぐるしく変わる展開も最近はやりの主人公の視線に沿ったものと理解しようにもそもそも共感する余地が冒頭から1コンマたりとも用意されていないのでただ見づらくなっているだけ。音も没入感がなくて只うるさいだけ。空間なき絵の連続に、ただただ不快感が溜まっていく。
個人的にはどんな表現も許容していきたいが、その魅力やそうしなければならない理由を伝える努力はしてもらいたい。ワカイオトコッテキモイーとかニンシンコワーイとかじめじめと見せられて楽しめるほどこちとら人間できあがっていないんで。
にしてもこんな革新性のかけらもない見掛け倒しがパルムドールで、我らがクローネンバーグ博士の新作がカンヌで何の賞ももらえないなんて世の中間違ってるにもほどがある。だから未来に期待できるのだが。