satoshi

ザ・ファイブ・ブラッズのsatoshiのレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
4.4
 スパイク・リーの最新作。今回はNETFLIXと組んでの作品。私は彼については『ブラック・クランズマン』がとても面白かったのでファンになりました。そんな中制作・公開された本作を見逃す手はないということで鑑賞しました。ちなみに、この作品を鑑賞したのは何と昨年の6月。半年以上たってからの感想です。なので、あっさり目に書いときます。

 本作を簡単に言ってしまうと、スパイク・リーなりの「アメリカという国家の断罪」だと思います。本作は計154分あるのですが、その時間のたっぷり使ってアメリカという国が何を犯してきたのかをハイスピードで描きます。それは本作の中心であるベトナム戦争から始まり、歴史を進めていって、現在のBLM運動にまで続いています。本作には過去の実際の映像も使われているのですが、NETFLIXという強みを活かしてかなり過激な映像も多いです。

 本作のメインはベトナム戦争に従軍した高齢の黒人4人+若者1人。彼らが以前の仲間が隠したという金塊を探しにベトナムまで行くというストーリーです。この辺でリーはいつものように映画の中で過去のアメリカ映画への言及を始め、『ランボー2』をディスっています。そして4人のベトナム道中も、『地獄の黙示録』的な側面があり、「ワルキューレの騎行」が皮肉を込めてかかります。その道中で語られるのはアメリカがどのようなことを犯してきたのかという断罪で、ソンミ村の虐殺にも触れ、未だに問題が深く残っていることを描きます。そしてベトナムを引きずって生きている彼らの姿も描きます。

 これらと並行してベトナム戦争時代の彼らも描かれ、「何が起こったのか」が次第に明らかになっていきます。このとき、彼らにとっての指導者的存在が出てくるのですが、ここにはキング牧師やマルコムXが重ねられているのかなと思いました。

 スパイク・リーは本作を「閉じた物語」にはしません。『ブラック・クランズマン』と同じく、「現実」へと映画は接続します。ここで語られてきた歴史と彼らの過去は、まだ終わってはおらず、その結果として、「現在」があると示されます。過去があるからこそポールはトランプを支持してしまっているし、アメリカの中の問題が積み重なっていった結果、今の問題があるのです。そして本作で見つけた「金塊」は「ブラッズ=同志」のために使われる。その「同志」とは、「今戦っている人々」なのです。それはBLM運動だけではなく、環境問題、地雷除去の運動、全ての戦いに対してです。本作は、アメリカという国の歴史を断罪しつつ、そこから積み重なっている問題と戦っている人々(=同志)へと向けられた、スパイク・リーの檄文なのだと思います。
satoshi

satoshi