大澤和子

グローリーの大澤和子のネタバレレビュー・内容・結末

グローリー(1989年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

この映画は、アメリカの南北戦争に実在した北軍の黒人部隊 の話です。ご存知のように南北戦争は、アメリカ合衆国の内戦です。実に南北あわせて62万人もの犠牲者を出したことからも激しい内戦だったことがわかります。アメリカ戦役史上最悪 の死者数を出した戦争です。そんな戦争なのになぜ「グロー リー」<(神への)賛美,感謝,(神の)栄光,恵み;天の栄 光「至福];天国>なんていう題名がついたか不思議でした。
レッドビル野営地において、若き白人大佐R・G・ショー が黒人兵を集めて、南部のアメリカ連合国の出した声明文を読み上げます。
 1 南部に対して武器を取るすべての黒人は即刻奴隷の身分に 戻される。
2 北軍の軍服を着た黒人はすべて死刑に処す。
 3 黒人部隊を指揮した白人将校は、死刑に処す。
この声明文を読み上げあと、R・G・ショーは、除隊を希望するものは明日の朝までに申し出るようにと言うのです。
さて、それぞれが悶々と夜を過ごします。指揮する白人将校 も、兵隊として戦う黒人も命がけの選択なのですから。
そして、朝みんな除隊してほとんど誰も残らないだろうと 思ったその朝、ほとんどが兵として残り、整列をしてR・G ・ショーを迎えたのです。その光景を見て、彼が感謝と感動を 込めて静かにつぶやいた言葉が。 「グローリー、ハレルヤ!」でした。
フォート・ワグナーの戦いの前夜、彼らはゴスペルを歌って、祈るのです。その祈りが胸を打ちました。
「主よ。俺の片手に銃を握らせ、もう一方の手に聖書を握らせ てくれ。俺がどこで死んでも、俺にはイエス様がついている。 だから恐れません。」 「おれは、逃亡したけど、家族はまだとらわれの身です。だか ら、今一度俺たちに祝福をお与えください。もし、天に召され るなら、俺たちが敵と戦ったことを家族に伝えてください。虐 げられる黒人のために勇敢に戦って死んだと。俺たちは自由の ために死んだと。」 「俺には家族もいない。おふくろも知らない。だから、お前ら が俺の家族だ。お前ら皆が俺の家族だ。54連隊が好きだ。明 日戦う俺たちには、誇りがある。人間の誇りだ。」
こういう祈りをした翌日、彼らはフォート・ワグナーの戦い の先陣を切るのです。白人大佐R・G・ショーは、戦死。惨 敗の負け戦でしたが、この黒人部隊の勇敢な働きが北軍に伝え られると、大勢の黒人志願兵が現れて、最後には北軍の大勝利 を導いたということです。
誰だって戦争は嫌いですよね。戦争は、人の心を鬼にします もの。できれば、ガンジーの非暴力のような解決はできなかったのかと思います。自由を勝ち取るために尊い血が流され、大勢の命の犠牲の上に、アメリカの奴隷解放が実現し、今の合衆国があるのだという重みをしみじみ実感する映画です。
黒人兵の役をした若き日のデンゼル・ワシントンが、いいんですよ。無言の演技。目で演ずるのです。第62回アカデミー賞そして、第42回ゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞も納得です。

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