じい

哀愁しんでれらのじいのレビュー・感想・評価

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
3.7
土屋太鳳の正しい使い方の見本のような作品でした。
彼女は美人だし人柄も真面目で誠実、常に一生懸命、しかも優しそう、そんな彼女なんだけどなんかこうなんとなく色々とtoo muchな感じ、意地悪な言い方をすると見てるとちょっと引いちゃうような。
そんな彼女にこのコハルのようなキャラを演じさせることで見事にこの作品の非現実感やわけわからん感、うーっすらと薄気味悪い感じを醸し出すことに成功していました。

田中圭の一見人好きのする爽やかなイケメンなのに裏がありそうな役どころはピッタリですね。布地屋さんでのお買い物シーンなどのコハルとのフィジカルな距離の詰め方がヒカリの母親役という獲物を確実に仕留めようとする恐ろしさを感じさせて最高でした。

子役のヒカリちゃんの絶妙な人をムカつかせる感じ(褒めてますw)も良かったです。
他の子役さん達の演技や役の置き所も良くて、この監督さんは子役さん達を子役という記号的な存在ではなくきちんと一人一人の演者として尊重しているように感じました。

確かに後半のまとめ方の雑さはちょっと気になりましたが、序盤からの不穏な空気の高め方や、ステレオタイプに押し込めない人物描写がとても良かったと思います。

物語冒頭に出てきたシンママ?母子に再会し、ブランコの押し方を「教えてあげる」シーンはコハルの一元的なものの観方に対する皮肉が込められていたようでとても印象的なシーンでした。

また、美術の作り込みの丁寧さ(特にコハルの実家の庶民感が見事でした。あの豪邸は愚行録に出てきたお家と一緒かな?)、音楽の使い方、画面の色遣い、すごく作品に真摯に向き合って作っていることをひしひしと感じました。

なんか上から目線な言い方になってしまいそうですが、色々な作品を見て影響を受けたり勉強をされたりしていることが作品の端々に感じられたのでこの監督の次回作にも注目したいなと思いました。
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