しろくま

いのちの停車場のしろくまのレビュー・感想・評価

いのちの停車場(2021年製作の映画)
3.5
2022.09.23/202/図書館DVD
〝ああいう終わり方は嫌だよ。母さん意識なんかないのにいつまでも点滴に繋がれて。約束してくれ咲和子。俺をあんなふうには死なせないでくれ。いいから約束してくれ〟

オカンに施されたのは〝延命治療〟(人工呼吸器をつないだり、栄養剤を点滴したりして、命をつなぎとめる治療)。これをオトンが望まないというのは分かる。しかし、オトンが病気の痛みに耐えられないから死なせてくれと頼むのは〝積極的安楽死〟で全く別物。違法行為で嘱託殺人罪となるけど、そのことをオトンはどれだけ分かっていたのだろうか。娘の将来を奪ってまでも、楽に死にたいと思うものだろうか。

訪問診療医となった白石咲和子(吉永小百合)が受け持つのは、終末期医療の患者がほとんど。病院で最先端の機器や新薬を使った治療を受けたいと思う患者が多いと思うが、限りあるいのちとどう向き合うのかを考えたときに、家族と共に過ごす在宅医療も選択肢の一つ。個性豊かな患者に戸惑いながらも、寄り添っていく咲和子。患者に対して、あれだけ手を尽くしているからこそ、オトンに対しても痛みを和らげる手だてはないものかともっとジタバタしてほしかったのだが…。

DVD特典として、メイキングと舞台挨拶の映像が収録されていた。当初は、原作通りに警察に出頭するサスペンスタッチのエッジの効いたエンディングにする予定だったけれどそれを変更した経緯、女の子と松永桃李さんが海の中に入るシーンなどの制作秘話、患者のモデルとなる方が実際におられたことなどが語られている。同じ年の田中泯さんと吉永小百合さんが、オトンと娘役だったことについて、田中泯さんがインタビューに答えているのも興味深い。
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