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ヤクザと家族 The Familyのペコのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.1
1999年、2005年、2019年と、3つの時代を生きた1人のヤクザの姿を描いたヒューマンドラマ。綾野剛を始めとする演技派の俳優陣の演技力は素晴らしい。特に3つの時代を生きた綾野剛演じる賢治の表情がどれも違っていて、その演技力の高さに引き込まれました。ヤクザ映画は個人的には苦手なのですが、この映画は"ヤクザの物語”ではなく"家族の物語”でした。ヤクザを肯定するわけではないが、ヤクザだって一人の人間。自分の過去や生き方に苦しんだり、周囲に迷惑をかけたり傷付けたり…。生きにくい社会で生きていかなければならない現実。生活や仕事が違うとはいえ、なんだか他人ごととは思えないような切なさを感じてしまいました。ヤクザにだって人権はあるのだ。ヤクザは家族を築けるのか…時代は違えど、家族を想う気持ちや、愛されたい愛したいと思う気持ち。守りたい守られたいと思う気持ちは一緒であって誰もが持っているもの。"家族”という普遍的なテーマと "ヤクザ”という要素をこれ程までに上手くミックスさせて感動作に仕上げたのだから素晴らしい!昔は「カッコいい」「義理と人情の男が生きる道」というイメージがあったヤクザが、いまの時代では「ダサい」「古い」なんてイメージを持たれている。昔と今の反社会的組織の立場や変化を上手く描いた藤井道人監督の表現力もまた素晴らしい!人は一人じゃ生きていけない。でも誰かに頼ったり、誰かの傍にいたいと思ってしまうと、誰かを傷付けてしまうかもしれない。捨てられる過去と、捨てたくても捨てられない過去がある。人間って不器用で臆病で孤独な生き物なんだと感じました。
不器用ながらも誰かの身代わりになってでも家族を守ろうとした賢治にとっては最後は幸せだったのかもしれない…。救いようのない話なんだけど、少しだけ救われた気がしました。切なくて切なくて切ない映画でした。ちょっと話そうか。
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