ペコ

オッペンハイマーのペコのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
「原爆の父」と呼ばれた物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画。第96回アカデミー賞では作品賞を受賞。しかし劇中で広島や長崎の描写がないことや、映画「バービー」とのコラボキャンペーン写真がSNSで騒動になったりする等、一時期は日本公開も危ぶまれていた本作ですが、観れて良かった!
IMAXで鑑賞。これはIMAXで観ることをおススメします。「観る」というよりも「感じる」作品だと思いました。音の使い方がとても秀逸。原爆の恐ろしさを“映像”で見せるのではなく“音”で見せてくるノーラン監督の演出に圧倒されました。そして主役級の俳優陣がたくさん出演していて見応え十分。第二次世界大戦中にオッペンハイマーがいかにして原爆を開発したのかがメインストーリーではありますが、彼の私生活も描かれていて人間味を感じられるシーンが多かったのが印象的でした。天才のように見えるオッペンハイマーも、人間関係に悩み教師を毒殺しようとしたり、妻がいるにもかかわらず浮気をしたり…。
原子力や量子力学、政治用語など、難しい言葉が飛び交い、時系列も行ったり来たりで理解が追い付かなかったのが本音。登場人物が多すぎて相関図がわからないまま観終わってしまったので消化不良を感じました。でもナチス・ドイツが降伏し、目標が日本に切り替わってからは観ていて緊張感が増しました。日本への投下を話し合う会議シーンは恐ろしい。実験の爆発のシーンは恐怖しかなかった。アメリカ側の視点で描かれている本作。日本人からするとあの惨状を何故に映像で見せないのかという気持ちは分かる。しかしアメリカにも国、兵士、国民を守らなければならない使命がある。戦争を終わらせるために落とした原爆と思うと何とも言えない気持ちになりました。これは原爆の映画ではなく、オッペンハイマーという1人の男の人生を描いた映画。自分の発明によって、多くの国民の命を救い、英雄として称賛される一方で、多くの人の命を奪った事実に「自分が世界を破滅させてしまったのかもしれない」と苦悩するオッペンハイマーの姿に引き込まれました。天才や英雄と言われる人間であっても、何かを犠牲にし苦悩するものだと感じました。原爆や歴史的背景をきちんと勉強してからもう一度観てみたい映画でした。
ペコ

ペコ