KeiRalph

ヤクザと家族 The FamilyのKeiRalphのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
コロナの為のスケジュールがままならない理由もあるのでしょうが、ほぼ同じ題材の「すばらしき世界」とバッティングしてるのがホント勿体ない!

最近、現代ヤクザの不遇を描いた作品多いですが、恐らくその先鞭は東海テレビ制作の「ヤクザと憲法」から始まっているのでは、と思っています。一般市民では伺い知ることのできない組事務所の中、そして現代ヤクザ(反社会的勢力、でしたっけ…)の人権をも奪われている実情に、衝撃を受けざるをえませんでした。

60〜70年代の反体制のヒーローとして描かれていたヤクザ映画の時代はノスタルジーとなり、最早今作の様な体制の脱落者の側面を描く他なく、男のロマンは遠い幻想の夢物語でしかありません。当時の極道凋落ものでいえば、ヤクザ社会の内側で身を滅ぼすパターンですが、本作は令和版「仁義の墓場」と言えるかもしれません。

まあ、政治の世界はまだまだ無駄にロマンが横行している模様ですが…

本作は前述の様なヤクザ(義理と人情の擬似家族)と社会(リアルな妻や子)の双方を軸に、誰がその定義を成すのか?を問う作品かと思いました。

綾野剛演じる山本の地元ヤンキーからの極道スカウト、幹部候補までの成長は過去何百もある任侠映画ではド定番な展開。所属する柴崎組組長を演じる舘ひろしのどこまでも寛容な「オヤジ」っぷり(ちょっと型にハマりすぎ感は否めず)な所も、後半以降に起こる数々の現実の為のフックとなり、より悲惨さを増長させています。

前半たっぷり人物背景を描いた分、後半の凋落ぶりは凄いギャップでしたが、前作「新聞記者」でもキレキレの官邸批判をぶち上げた監督だけに、ヤクザ稼業だけでなく、人間としての尊厳までもが社会構造からのはみだし者として蔑まれ、排除される事を痛烈に批判している展開に。

この着地点に行き着くまでのさまざまなフックが、少し強引というか、こうなる事を予測させる為の展開で、少し乗れなかったのが、少し残念…だから、すばらしき世界とバッティングさせたらアカンって!

でも、綾野剛版「仁義の墓場」としては最高でしたよ。時間置いてもう一度見直したいです。
KeiRalph

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