ゆず

ヤクザと家族 The Familyのゆずのネタバレレビュー・内容・結末

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ワンカット目からもうカッコイイ。その後に続く空撮で藤井道人作品だと分かる。(いや知ってて観に行ったけど)内容も、ヤクザを主人公に「善悪」の話をやっていてこの監督らしいテーマと思った。勝手に。

北村有起哉って狡猾な役ばかりやってるイメージあるんだけど、本作ではバカが付くほどの生真面目なヤクザ・中村を演じていて意外だった。ヤクザとしても落ちぶれながら、真面目すぎるがゆえに足を洗うことができない。暴対法によって淘汰されていくしかない古いヤクザを中村に落とし込んでた。
そんな生真面目な中村と、仁義を貫く「ケン坊」こと綾野剛の取っ組み合いは滑稽で、なんだか哀しい。似た者同士…というか、二人とも完全に同じもののために憤り、争いになっている。あの時、罪を被った者と罪を免れた者、その違いしか彼らにはない。ケン坊の歩んでいたかもしれないもう一つの道が、中村の辿った道だ。

舘ひろしはなんかズルい…(笑)あの、反社を演じているのに好感度を上げてくる人柄はズルいでしょ…。それでいて凄みを見せる時はきっちりカッコイイという…あーもう本当ズルいよ舘さん…。
あと寺島しのぶはそんな端役でいいんですかね…。韓国料理屋のおばちゃんの髪型がハマりすぎていたけれど。顔のアップ一度も無かったと思う…。寺島しのぶを呼んどいて、ただの知り合いのおばちゃんの役だけやらせて帰らせるって…、藤井監督って将来ものすごい大物になるのでは?

ラストにはある意味ホッとした反面、不穏な気分になった部分もある。
やはりヤクザだったことは一生消えないし、そんな彼らには未来はないのかもしれない。生き延びて幸せに暮らしました…みたいなのを見せられてもちょっと困ってしまうし…。未来がないのであれば終わるしかない、というわけであの終わりにはある意味でホッとしてしまう。
問題は残された者たちだ。
ケン坊に憧れ、半グレのリーダーになってしまっていた翼。そして父のことを知りたいと願ったケン坊の娘。翼はケン坊の過ちに満ちた人生を武勇伝として娘に語るだろうか、美談として語るだろうか、それとも悲劇として語るだろうか。
もしも悲劇として語るのならば、翼はまだ「分かっている」だけマシだと思える。しかし、なんにせよ翼もその悲劇を自分で繰り返そうとして、戻れないところに来てしまっている。
そんな風にしてヤクザのDNAは他者に受け継がれていく。別に受け継がなくていいものが、周りの人間にまで伝播して、それを「家族」と呼ぶのだろうか。
ゆず

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