蛇らい

ヤクザと家族 The Familyの蛇らいのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.2
2幕まで、あえてスタンダードなヤクザのパブリックイメージに乗っ取り物語が進む。その後の3幕で、ヤクザの存在の変容を何点かに凝縮して映し出す。ヤクザにたどり着いてしまう人、ヤクザがたどり着く場所が示唆される。

3幕の途中、SNSに拡散された画像の影響で周囲の人間が社会から追いやられるという直接的な風刺のシーンがある。『新聞記者』のような映画として悪い流れに向かうのかと頭をよぎったが、なんとか堪えた印象。

アウトサイダーという言葉があるが、ヤクザや反社会勢力に随する者であろうと、完全な社会の外側で生きることはできない。否が応にも社会の中に組み込まれる。ヤクザ以外の選択肢や受け皿がなく、仕方なく踏み込んでしまった人々も一緒くたにヤクザと括られる。それらは次世代にも延々と受け継がれ、負のループとして現代に息づいてしまっている。

今回は『新聞記者』と違い、しっかりフィクションとして楽しめたし、映画的な作劇や演出も意識的にできていて良かったのではないかと思う。人物像の深掘り、キャラクター同士の交錯する人間関係も魅力的に描かれていた。監督が『新聞記者』のように企画に毒されないような作品が今後も作られることを祈る。
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