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ヤクザと家族 The FamilyのMMMのネタバレレビュー・内容・結末

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ずっしりくるストーリーだった。

ヤクザとして生きた男の一生。
そこにはヤクザにならざるを得なかった少年がいて、ヤクザとして生きて、気づいたら彼はヤクザという世界から抜けられない、普通には生きられなくなっていた。

ヤクザを肯定するわけではないけど、ヤクザにだって家族がいて案外普通の人間みたいに恋愛したり、義理人情に厚くて普通の人間よりよっぽど礼儀正しかったりもする。

ヤクザが華々しい時代が終わって、令和になったときの変わりようが辛かった。がらんとした事務所…。ヤクザの人数とか、仕事内容とかだけじゃなくて、「義理と人情」という信念までも変わってしまっていた…。親分が入院した時に10000円ずつ集めるシーンとかも、なんかセコすぎて全然儲かってないんだなぁ。そこで綾野剛だけ何万も渡すのが、ムショに入っていたせいで感覚がみんなとズレている。でもそれってまだ義理と人情で生きてる証拠。義理と人情のために人を殺してムショに入っていた山本が、義理と人情を捨てた後輩に殺される…つらい。

5年ルールって何のためにあるの?5年もまともに仕事できなかったら更生したくてもヤクザの道に戻ったり、犯罪に手を染めるしか道ないじゃん。ヤクザだって人間なのに人権ない。ヤクザはヤクザとしてしか生きられない環境にある。そこに手を差し伸べなければ彼らを救えないんだよな…。でもそんな簡単な話じゃないんだよなあと頭ぐるぐる

まさか翼がおんなじような道を歩んでて、まあでもあの環境で育ったなら必然かもしれないよなって。綾野剛はヤクザだから、本当の家族のことは守れなくって家族にはなれなかったけど、血のつながりのないヤクザという関わりの中での家族とは最後まで”家族”だったのかな。だから翼のこと守ったのかな。タイトルの家族は本当の家族とヤクザの家族のふたつを表していると解釈した。

令和の柴崎組の下っ端役の子が全然ヤクザっぽくなくて謎で笑ってしまった。これもヤクザの衰退を感じさせる演出なんだろうけどあの子はどういう成り行きでヤクザになったんだろうか…気になる。

あとカメラワークがめっちゃ良かった。食卓テーブルを真上から写して、地面に置き換わるシーンめっちゃよくて鳥肌たった。

とにかくキャストがいい。よくこれだけ治安の悪い顔を集められたな。綾野剛は10代からアラフォーまで違和感なく演じられてた。20代の綾野剛がめっちゃどタイプ。尾野真知子の若い頃めっちゃかわいかったけど、14年後はどこにでもいそうな普通のお母さんになってた。この役は尾野真知子しかできんと思った。尾野真知子って変に目立たないから作品にさらりと溶け込んで邪魔をしない。
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