おーけせらけせら

ヤクザと家族 The Familyのおーけせらけせらのネタバレレビュー・内容・結末

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

最後まで、綾野剛が着ていたあの真っ白な “THE NORTH FACE”が気になってしまったのは私だけでしょうか?

1999年の静岡であんなスタイリッシュ (デザインがどこか今風) な “THE NORTH FACE” は手に入ったのだろうか?とそこがどうしても気になってしまった (ノースフェイスノースフェイス、何度もすみません)。
きっと、東京に遊びに行った時にOSHMAN’Sで買ったんだ...うん、多分そう。それかあれだ、韓ドラのように “THE NORTH FACE” のPRとして着ていたのかもしれない...。衣装にブランド名ががっつり見えると結構気になる。

全体的に説明台詞が多かったのと、意外とあっけなく綾野剛がヤクザになっていた。一鑑賞者として、主題であろう「家族」の重さというか...そこを受け入れたり共感する時間があまりなかった 。

綾野剛演じた役がどれだけ家族という共同体とは縁がなく、愛を知らず、孤独だったのか。経済的にも社会的にも生き辛い若者であったのか。その点がもう少し描かれない限りには、舘ひろしが彼を「(ヤクザの) 家族」として受け入れ、盃を交わしたシーンに重みが増さないような...

また、気が緩んだとしても私だったら他人の携帯でヤクザの兄貴との笑顔ツーショットは絶対撮らせない。現に市原隼人はそこら辺苦労をして家族のためにしゃかりきになって働いていたようだし、そんな軽率なことしないのでは?と突っ込んでしまった。

描きたいことはよく分かるけれど、「暴力団対策法によるヤクザの閉め出しにより彼らは現在とても生き辛い。人権がないじゃないか」、という 監督がどうしても伝えたかっただろうメッセージが何度も色んな役者によって説明的、そして直接的に語られる。正直お腹いっぱいになってしまった。

脚本と編集がいまいちだったのかな...。

綾野剛の泣きの芝居はとても美しかったのと、尾野真千子が所々コミカルで愛嬌があった。北村有起哉が舘ひろしを看取るシーン、表情がとても良かった (演技が上手い。あー人を失う瞬間ってこうだよな...とか思い出して悲しくなった)。

ハードルを上げすぎたかな...。

あと、癌の末期患者は危篤状態からあんなに話せるようにならない...。死ぬ直前は痛みを抑えるためにモルヒネ打ってるだろうし、会話できなくなってるはず。

申し訳ないのだが、本作と似たようなテーマを扱っていた西川美和監督の『すばらしき世界』と比べてしまいました...。

どうしても最後までフィクション感 (作り物感) が抜けない映画(これは男のロマン、ヤクザもの系フィクションだ!と呑み込めば観れる) だった。2019年、シャバに出た綾野剛が寺島しのぶの店前で彼女と再会するシーン、退店する女の子たち3人組 (エキストラ?) がそろそろと気まずそうに帰っていく様子が気になった。まず、あれくらいの年齢の子が3人であの店に入るのかな...?洋服もちょっと洒落てたし尚更煙たい店には入らない気が。

フィクションだと分かっていてもその世界へ没入し、登場人物の痛みや喜びを共有し、物語の余白に誘われる....というのが映画の醍醐味だと思うのだが、それがなかった。

あと、岩松了の丸顔が可愛らしかった。