からかす

ヤクザと家族 The Familyのからかすのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
タイトルこそヤクザを謳っているものの
実のところヤクザ映画ではなく反社映画といった趣。
義理人情に熱い任侠テイスト、苛烈な実録テイストも
どちらも内包してはいるものの
ヤクザが反社会勢力と呼ばれるようになった現在の悲劇を
落ち着いたトーンで描いている。
ヤクザがヤクザだった華やかな時代を描いてから一転という
落差を強調する効果もあり3時代構成は大正解。

手持ちカメラで揺らし、
北野ブルーとはまた違う青みがかった画面は
藤井監督の「新聞記者」でも観られたようなスタイルで
個人的にこのスタイルは嫌いではないが
たまーにちょっとクドイなと思う瞬間もある。

問題は悲劇性を高めるためにキャラクターの頭を弱くしたことで
主人公山本や組長柴咲、兄弟分の細野がアレなのはまだしも
ヒロインの頭が悪いのはちょっとどうなのと感じるところ。
第3幕の悲劇を招くに決まってるあの立場であの行動は
いくらなんでも…ねえ。

ただ本作のMVPを挙げるとしたら
その頭の悪いヒロイン演じる尾野真千子。
第3幕の魂の絶叫シーンはベタだけど素晴らしいよ。
明確に一線が引かれるあのシーンは本当に見事。
綾野剛は「日本で一番悪い奴ら」でも見せた手練れた演技。
市原隼人も良かったね。

なにせヤクザが主役だから
本作の悲劇性に同情できるかと言われれば
全く同情はできなくて
ヤクザという家族体を選んだのに普通の家族まで求めるって
そりゃ無理だよなというのも本音。
今ヤクザになろうと思ってもヤクザにはなれない、
反社勢力になるという
ある種の教育資料として有益な一作かもしれない。
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