真一

ヤクザと家族 The Familyの真一のレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.7
ヤクザの人権は認めなくていいのかー。衰退する暴力団の目線に立ったユニークな映画だ。

 確かに、ヤクザと言えば恐喝、暴力で市民の人権を侵害する街のダニという印象しかない。でも、そんなヤクザだって人間には違いない。日本国憲法の下では、基本的人権は万人に保証されている。暴力団を衰退させるだけでなく、組員一人一人の生活まで奪っていいのか、生きる権利を奪っていいのかという主人公・ケンジ(綾野剛)の訴えには、説得力があった。

 そもそもヤクザになるには、それなりの理由がある。親がおらず、身寄りのないケンジにとって、親分(舘ひろし)は、本当の父親同然だった。冷たい社会から排除されている人にとって、組は、家族そのものなのだろう。そうした社会構造にメスを入れず、ヤクザだけを締め上げても、半グレを増やすだけだということが、本作品を通じてよく理解できた。

 綾野剛の演技、今回も最高だった。綾野ワールド全開でした。そして、翼役の磯村勇人君も素晴らしかったです。新しい時代の半グレっぽさを出しつつ、人情への理解を示す一面もさりげなく見せる演技は相当なものだと思う。波止場で「話しようか」と彩に言ったシーン、胸に響きました。
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