Uえい

ブリキの太鼓 ディレクターズカット版のUえいのレビュー・感想・評価

3.5
何だかアマプラ配信開始時に盛り上がっていたので気になって見てみた。これは第二次世界大戦前後のダンツィヒをとある子供の目線で映した硬派な物語だった。ただ、その子供が曲者過ぎて不思議な魅力があった。

ドイツ人夫婦の子供オスカルは成長をコントロール出来た。3歳でブリキの太鼓のおもちゃを貰ってから、本当の父が浮気相手のポーランド人だと分かり、大人に失望して成長を止めた。

当時ナチ党が台頭してきており、ユダヤ人の迫害も過激になってきていた。そして、母が再び浮気相手の子を宿し、精神を壊して自殺してしまう。

その後、ポーランド侵攻が始まり、オスカルは郵便局での最初の戦いに居合わせ、本当の父を失う。その後、家に手伝いに来ていた少女に初恋をするが、弟を宿していた。オスカルは失恋から小人達の興行で各地を回り、再び家に帰ってきたのだった。

戦争に翻弄される市民を描いているが、主人公が成長をコントロール出来たり、奇声でガラスを割る能力があったりと不思議すぎる。

描き方も面白く、生まれてくる視点の映像や、殺された修道女の魂が昇天していく映像など、リアリティーラインが異なるシーンが突然出てきて印象に残る。劇伴もテルミンのような電子音の様なものが混じっていて、不思議な感覚になる、直近だと「哀れなるものたち」の感じに少しだけ似てるかも。

オスカルは成長を止めてから見た目と中身のギャップが開いていき、エスターみたいな不気味さがあった。そして自分の悪戯によってバタバタと周りの人間が死んでいくのが自業自得の様だけど、その裏には社会情勢からくる理由もあって嫌いにはなりきれない。最後にはオスカルがひとりぼっちになってしまうが、これは誰のせいなのだろうか。
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