てつこてつ

太陽がいっぱいのてつこてつのレビュー・感想・評価

太陽がいっぱい(1960年製作の映画)
4.2
それまでは、どこかアイドル的存在であったアラン・ドロンの新境地を拓いたルネ・クレマン監督の傑作サスペンス。

テレビの映画番組で観て以来だから、何十年ぶりかでブルーレイで鑑賞したのだけれど、どこまでも白い建物がたち並ぶイスキア島の美しさ、ポスターでも使われているヨットシーンの地中海の青さ、そして、三人の主要キャラクターを演じた俳優陣の美しさが、ハイビジョン画質によって何と際立つことか!

本来、アラン・ドロンが演じた主人公と、モーリス・ロネが演じた富豪の友人は「アメリカ人」設定のはずなんだけれど、そんなことなど、どうでもよくなる(笑)。アラン・ドロンの陰のある表情や射貫くような視線の演技は特筆もの。

素晴らしいプロットに監督、素晴らしい役者陣、素晴らしい映像、素晴らしい映画音楽が揃ったこの作品は、フランスが生んだ大スター、アラン・ドロンの代表作であることはもちろん、最も世界的にも評価の高いフランス映画の一本であるに違いない。

余談だが、原作者のパトリシア・ハイスミスは公開作品を観て、概ね良い評価をし、特にアラン・ドロンのリプリー役には大満足だったとか。彼女が本作でどうしても我慢できなかったのは、皮肉なことに、あまりにも有名なあのラストシーン・・。

原作では、リプリーは逃げおおせる終わり方をしていて、マット・デイモンが主演したリメイク版では、確かに、そういったエンディングにしている。でも、原作はどうあれ、本作の終わり方を無くして、この名画は、もう語れない。
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