リサ

太陽がいっぱいのリサのレビュー・感想・評価

太陽がいっぱい(1960年製作の映画)
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アラン・ドロンをフィリップ役からトム役に変更したルネ・クレマンの判断は大正解だったと思う。
貧しい家庭で育ち、薄暗い野心を感じさせるドロンは、トム役にはまっている。

原作ではトムは同性愛者の要素を持つ人物として描かれていたが、映画版ではその点がややぼかされており、マージとの関係も若干相違が見られる。そのため、大筋では原作のストーリーをなぞってはいるものの、細かな人物の感情の起伏や奥行き、複雑な緊張感を保ちながら絡み合う人間関係が、やや単純化されて描かれてしまったように思われる。

しかし、映像化作品としての完成度は高く、南イタリアの美しい景色、色彩の重厚さが存分に楽しめる。特に地元の祭で黒いマリア像を運ぶシーンは印象的。ニーノ・ロータの音楽も共通しているが、この作品とゴッドファーザーのイタリアでのシーンは本当に美しいと思う。
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