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DOOR II TOKYO DIARYの盥のレビュー・感想・評価

DOOR II TOKYO DIARY(1991年製作の映画)
4.7
主人公アイは、ラストシーンにおける清々しい笑顔と恐ろしすぎるスピーチによって女性映画史に名を刻んだ。すごいインパクト。まさに怪人物。

アイの行動原理は何なのか?

結局、風見しんご演ずる友達(既セク)が忘れられずにハメを外した、という、よくある話なのか?しかし、それにしてもやりすぎだろう(特にラスト)。

最後まで見ても、繋がっているようで繋がっていない心理描写が観客の理解を拒む。アイに関しては、理解しようとするのではなく、ただ「そういう人がいる」という、存在論的な理解をするしかないのかもしれない。

存在論的なキャラクターといえば「DOORⅢ」や「CURE」を監督した黒沢清だが、高橋伴明「DOORⅡ」では後の「CURE」を先取りするような、廃墟めいた精神病院が登場する。案外、黒沢清もこの映画が好きだったりして……廊下を走るシーンとかも、なんか似てますよね?

TOKYO DIARY という副題は、そして売春という題材は、庵野秀明「ラブ&ポップ」を彷彿とさせる。「バブル時代の東京を描いた……」などと紋切りの形容をしたくなる(ラブ&ポップはバブル時代ではなかったけど、90年代東京を切り取っていた)。

しかし、度々現れる、明らかに横浜のロケ地……ジョー山中とアイが訪れる地方の別荘……この映画を「東京を描いた」と表現するのは無理があるだろう。じゃあ何を描いているのか?→アイを描いている。→アイとは何か?→わからない………そう、この映画はよくわからない(でも非常に面白い)映画なのだ。

何が面白かったのか、自分でもよくわからないが、とにかく良かった。無駄に怖すぎるバイオレンス描写があったり、カオスなところがいいのかもしれない。なんだか久しぶりに映画を見て元気が出ました。

すごく好きな映画です。
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