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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間の盥のレビュー・感想・評価

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2022年2月24日、ロシア軍のウクライナ侵攻が開始。ウクライナ領ドネツク州の港湾都市であるマリウポリも、ロシア軍の攻撃による壊滅的な被害を受ける。同年5月17日に現地ウクライナ兵は登降、現在に至るまでロシア軍の占領下となる…

現時点で判明しているだけでも、このロシア軍の戦争犯罪によるマリウポリにおける死者数は2万5千人以上。多数の民間人が含まれており、実態としてはさらに多くの人が亡くなられているものと思われる。

この映画は、侵攻開始から二十日間、現地に残留することを選び撮影・記録を続けたAP通信社のウクライナ人記者が製作したドキュメンタリーだ。

映像は、二つの言葉に集約できる。ロシア軍による「無差別な破壊」と「無差別な殺戮」だ。民家でも病院でも、子供でも誰でもお構いなしに破壊する、殺す。病院では懸命な救助活動が行われるが、被害者があまりにも多すぎて、とても追いつかない。見ているだけで苦しい、絶望的な状況……

死と破壊の街になったマリウポリ、そこに生きる人たちの姿と言葉が克明に記録されている、極めて貴重な映像。こうした言葉にならないような惨劇がウクライナでは続いている。ロシア軍の侵攻が止まらないかぎり被害は増え続けるだろう。

ぼくら人間はとても忘れやすいし、目を背けるのが上手なので、ニュースメディアはウクライナを取り上げることが減っている。ウクライナだけではなく、ガザなど他の国々で行われている戦争犯罪も同様。見ること、聞くことからしか関心は集まらないのに。
だからこういうドキュメンタリーが貴重なのだ。
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