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あのこは貴族のmaiのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.1
原作が好きすぎるというバイアスはなきにしもあらずなのですが笑、言外の感情までうまく表現されてて本当に良かったです。
最近の「ジェンダー映画」とは少し違って、どちらかというと「シスターフッド」と表す方が近いかもしれません。
セーラームーンとかプリキュアなどの、いわゆる「女の子同士の連帯」です。

田舎と都会。
お金持ちと一般人。
どちらも嫌味に描かれることなく、田舎の人から見る都会の人も、一般人から見るお金持ちの人も「自分とは世界が違う」人として描かれます。そこには「お金持ちって何でも持ってて良いよね」とかの嫌味っぽさはなく、「私が知らないだけで、そういう世界もあるよね」くらいのあっさりな感情があって…ある意味そこがリアルだし、「羨んでも仕方ない、自分ができる生き方をしなくては」くらいの達観が入ってる気がして好きでした。

そして、出てくる女性がことごとく「典型的なタイプ」。
家族の中には家柄を気にするような、現代で言えば古風な人もいれば、そんな雰囲気を嫌ってバリバリに働く人もいる。
主人公のハナコはそんな中で「自分の人生ってどうなんだろう」と自覚すらしてないような不安の中で婚活を始めます。
家庭を守るのが女の仕事?
子供を産まなくてはいけないの?
仕事をするには夫の許可が必要?
こう書き並べると、どこかの映画でも同様に扱われてるんじゃないか的な既視感に襲われるのですが、この映画の一線を画するところは「そうなることを選んだ」という点だと思います。
家庭に完全に入って、旦那さんを支える妻になる…そういう生き方もあるよね、でもそれに流されてる私ってどうなんだろう?本当は違和感を覚えてるのに。
そんな心の声がどんどん強くなっていくのがハナコの役どころだったように思います。そして、その違和感をもたらしてくれるのが苦労人のミキ。

友人が「なんで女性同士ってことで敵対させる構図が出来上がるんだろう」と言葉にしたのが全てだと思います。
親は子の苦しさを知ってるはずなのに、そんなことも忘れて結婚や出産を急かせる。そして、女2人と男1人になったら勝手に対戦の構図を作り上げる。もしかしたら、話し合うことでどうとでもなるかもしれないのに。さらに言えば、私たちはそうなることが当然かのように思ってる節があって、まるでそれは呪いかのようで。

そういう現状に「生き方はそれぞれだし、男性・女性とか関係なく、自分の人生を選んだら良いよ」と大手を振って送り出してくれるのが「あのこは貴族」だと思いました。

映画がハマったら、ぜひ原作も!
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