テリー微糖

あのこは貴族のテリー微糖のネタバレレビュー・内容・結末

あのこは貴族(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

自分の上っ面だけのステータスを
自分以外の誰かの
人生にとっての生産性の向上に
利用できるか否かという基準だけで
他人から相対的に値踏みされる

そんな「肩書き至上主義」的な
価値観を代表する高良健吾演じる男を
物語の背骨にして
彼の華美ともとれそうな生き方を
違うアプローチでモヤモヤを感じている
異なる階層に属する2人の女性の視点で
描いた作品

口語的な会話に
文語的な返しをしてみたりなどの
台詞の細かい言い回しで
心理的な距離感のミスマッチを
表現するなどの繊細な表現が
凄く印象に残った。

ちょっと変な例えかもしれないけど
あのイケメンくんの人生を
夜の営みに例えたるとしたら
なんか「賢者モード」を
永遠に拗らせたような感じだと思った。

コミュニケーションの過程を無視して
さっさと用を済ませてお終いにしちゃう
あの感じにソックリな気がする…

男女の話なんだから
少しはあっても良さそうな
その手の過程のシーンが無かったのは
そんな意図もあったのかも…?

他人の人生を
自分の人生の欲求を満たす道具のように
無意識にあしらってしまう
100点満点、最悪オブ最悪のダメ男の
血の気の通ってない会話の感じが
今後の人生における
最高の反面教師になること間違いなし。

そんな彼との人生と向き合って
2人の女性の出した結果には
個人的には凄く共感できる。

ただ、個人的には
ラストシーンでもっと爽快感のある
三行半を叩きつけて欲しかったなぁ…

あの感じだと
ちょっと未練がましさが残って
「分断に迎合しない
自分だけの生き方を楽しめ!」という
作品のテーマがボヤけてしまう。

これは凄く勿体無いと思う。

色々言ってしまったけど
「雑談をしっかり掬い取る」ことで
その人を深く知ろうとする姿勢が
人との関わりを転機に変えるんだという
凄く大切な学びを得られた
個人的には「観て良かった!」と
心から感じた作品。

ニケツシーンや
門脇麦さんが歩いて帰宅するだけの
シーンひとつとっても
凄く細かいディテールに
形容しがたい感慨深さがあって
そのあたりも魅力的!

個人的に1番好きだったのが
「夏休み、一緒に髪染めよ?」を
成人用に上位互換表現した台詞

「老後のためにさ、○○の毛剃ろうよ」

これを言い合える仲になる人間関係って
凄く憧れるなぁ…
テリー微糖

テリー微糖