やっちん

あのこは貴族のやっちんのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.1
現代版 東京物語。                 

現代社会におけるヒエラルキーをお嬢様である門脇麦演じる華子がやんわりとした何とも言えない佇まいが本作を柔らかいタッチで品のある口当たりの良い質の高い作品に仕上がっている。

こういった男女の社会における立ち位置に触れる作品は往々にして言い知れない息苦しさを感じるものだが、本作においてはその感じがほぼなくこれも一重に監督の優れた手腕に追う所が大きいと思う。

東京の様々な景色、またホテルやレストラン、BAR、大衆居酒屋など多種多様なシチュエーションを劇中上手く取り入れており、またセンス良くそこに生きる人々の在り方を描いている。
そしてスカイツリーでなく東京タワーにカメラを当てている感覚も良かった。

水原希子演じる美紀も上京して初めて感じる東京の階層社会に最初戸惑うものの、そこから目力強く跳ね除け逞しく生きる様をこれまた好演している。
友人と二人乗りで東京の街中を自転車を漕いで帰宅するシーンは何か清々しく微笑ましい場面であった。

主役二人を支えるお互いの友人二人も良かった。

ラストシーンも自分の足で歩み始めた華子の静謐ながらも凛とした微笑みはとても印象的でありグッと来るものがあった。
心地よい余韻に浸れる作品に巡り会えた。
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