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あのこは貴族のsのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
原作が好きなので観た。映画版「ここは退屈迎えに来て」がアレだったので期待せず観たがすごく良かった。岨手由貴子監督、アラサー女子の生きづらさポイントをよく分かっとる…。山内マリコが描く上流階級者と一般庶民、東京出身者と地方からの上京者、男性と女性といった対比が絡み合う現代社会の構造が彼女たちの視線や服装、遊ぶ場所や建物、といったもので視覚的に対比されていて人への入り込み方がとてもうまかった。ミキちゃんとコーイチがいつも会う中華屋さんは、ミキとだからこそ気兼ねなく来れる場所なのだろう。ミキが地元の干物を餞別として渡すシーンは泣ける。(原作にあったっけ?)
あとはハナコのタクシーでの移動に対してのミキの自転車移動、はたまた道路を挟んで向かい側を2ケツする女子高生とのコミュニケーションが生まれる感動の場面。ハナコが初めて自分の足で東京の街を歩いたからこそ見えた日常の景色、そして他者との繋がりがここで示され、上流階級のハナコといわゆる一般庶民の女子高生が対等な立場と目線で視線を交しお互いがお互いを同じ人間、今ここにいる人間として認識される。勝手にオザケンの「天使たちのシーン」が脳内再生されるくらいには好きなシーン。これは小説の描写では描けない、映画ならではの対比でありすごく好きだなと思った。
ラストシーンでは客席を挟んで対岸にいるミキとコーイチの視線がぶつかり、お互いを見つめ合う視線が反復で映し出されるところ、そこからのエンドロールへの流れがしんみりとしていて上品な終わり方だった。特に凝ったものとかはないのだけれど、ハナコの明るい未来への兆しが感じられる終わり方で好きだった。また何年かしたら観返したい映画。
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