木曳野皐

あのこは貴族の木曳野皐のレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
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温かいフィルムのような映し方なのか映り方なのか私には分からない。上流階級の人には映画も分かるんだろうか。

日常の些細な違い。茶の嗜み方や車と自転車、華子が使うシャネルやエルメスのバーキンと美紀が使うヴィヴィアンとカルティエ。家族皆が揃った慎ましくも“貴族”を表すに相応しい体の良い写真と、友達と肩を組んで満面の笑みで写る写真。外部生と内部生。
私は庶民もいいところなので貴族の良さは全く分からない。だけど本当の本当は貴族だって「貴族で良かった」「この家で良かった」と思える人なんてひと握りじゃないのか。
分からなかったのは華子が美紀に出会って“何が変わったのか”という部分だった。
ただ単に「階級」という暮らしの違いを淡々と流す映画だったのかな。
「同じ東京で暮らす階級の違う女が出会って選択肢を決める話」
ではなく、
「同じ東京で暮らす階級の違う女が出会うだけの話」
だった。
多分後者が正解なのだろうが、観始める前から前者だと思ってしまっていた私のせいでこの映画は台無しだ。モヤモヤしてしまう。

だけどすごく雰囲気は好きだった。
絶対芯があるであろう門脇麦の芯を抜いた貴族側の華子と、違う映画だったらつり目アイラインにドレスを着て貴族役をやってたであろう水原希子の庶民側美紀のバランスが良かった。
何故かすごく心地のいい時間が流れる中でこの映画は現実を突きつけてくる。
私はあちら側にはいけないけれど、あちら側もこちらには来られない。
そして結局最後の最後の選択肢で選ばなきゃいけないのは自分だという当たり前のこと。でも私は1番この当たり前から目を逸らしたい。これもないものねだりなんだろう。全ての道もお金の在り方も何もかも私は決めて欲しい。そしてそれに対応できる才能が欲しい。
木曳野皐

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