チーズマン

イングリッシュ・ペイシェントのチーズマンのレビュー・感想・評価

3.6
まさに愛に燃え尽きた人の話しです。

すごい権威のあるっぽい文学賞を受賞した「イギリス人の患者」という小説を原作にアンソニー・ミンゲラというイギリス人が監督を務めた壮大な愛の物語です。
読んだことない私が言うのもなんですが、文学的な匂いすらも上手く映画として描けていたんじゃないでしょうか。


まあ、時間の長さはありますが、おそらくこの作品は短いとあまり伝わらないように思います。


レイ・ファインズが演じる主人公がいます。
彼がまだ元気で、“ラズロ・アルマシー”という名前で呼ばれていた1930年代後半のリビアの砂漠での1人の既婚女性との禁断のロマンス。
そしてその彼が重症を負い“イングリッシュ・ペイシェント”(イギリス人の患者)と呼ばれながら第二次大戦末期のイタリアの修道院で1人の女性に看病されながら看取られるまで。
その2つの年代の話しが交互に描かれていきます。

主人公を通して2つの対照的な愛が描かれてました。

リビアのシーン、とにかく広大な砂漠の美しさに圧倒されます。
そこでの燃え上がるように愛し合う二人に関してはそれ以上言うことはありません。
野暮というものです。
切ないと言えばまあそうですが、様々なものを犠牲にしたあれだけの大恋愛を一生に一度でも出来たのだから本望でしょう、全てはその上でのことですからほっとけばよいのです。

私はむしろ砂漠での映像とは打って変わって寒々しいイタリアの修道院でのパート、瀕死の主人公がリビアでの記憶を辿りながら語る愛の純度の高さにハナ(ジュリエット・ビノシュ)とカラヴァッジョ(ウィレム・デフォー)のそれぞれ戦争によって傷を負った2人の心が徐々にほだされていく束の間のひと時がなかなか好きでした。
あと、ウィレム・デフォーが演じる役の中でも結構好きなキャラになりました。


おそらく日本人には砂漠よりもヨーロッパの石畳みの街並みの方がよほど異国情緒を感じると思うのですが、ヨーロッパの人々には地中海を隔てただけで何もかも違う中東の砂漠というのはとても異国情緒あふれる場所なんでしょうね、全く見たことのない景色に囲まれた場所での出会いは特別に感じるのは分かります。

じゃあ世界のどこかには日本の地方都市などチェーン店が無限ループしてる幹線道路沿いでも異国情緒とロマンスへの発展を感じる人々がいるのでしょうか、さあ異国の人よ、作れるもんなら誰か作ってくれませんかね、もはや見飽きて全くそんな想像がつかないのですが…。


ちなみにこの素晴らしい砂漠の情景を撮った撮影監督のジョン・シールは『マッドマックス怒りのデス・ロード』の撮影でもその砂漠力を発揮することになりますが、やはりこの作品があってのことなのでしょうか。
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