鎬一喜

日本沈没の鎬一喜のレビュー・感想・評価

日本沈没(2006年製作の映画)
1.6
僕シリーズ第三弾『僕と日本の沈む道』というべきか。

日本列島が沈むかどうかの瀬戸際に立つ中、己の生き方に迷う草彅剛は避難所と深海調査船の間を行ったり来たりしている。友を失い、愛する人たち(ここでも母親役は長山洋子!!)を救うため残りの人生を《日本に》捧げるわけだが、特攻隊の美談とも重なる上、ヒロインとの別れのシーンで主題歌が流れ始める演出は「悲哀」を通り越してダサく、少し笑ってしまった。

救助活動に奔走する柴咲コウの顔は灰まみれにならず、沼津の大火災に巻き込まれる草彅は傷一つ負わない。ことある毎にテレパシー的な予知能力を発揮し始める女性たち、祈ることしか出来ない総理大臣、仏像と共に国外逃亡を図る"無能"官房長官(F田康夫dis?)、モース『十戒』級の奇跡を起こす六平直政一家など、スピリチュアルっぽい要素を漂わせているが、それこそ『ノストラダムスの大予言』『人間革命』には遠く及ばない。
最大の見どころである大災害シーンも(製作費20億円超と謳いながら)予告編・CM以上に高まるショットがなく、精度の低い俯瞰映像+エキストラ合成でお茶を濁す描写が多かった。被害状況を報じるニュース画面や(TBS配給の意地!!)子どもの前で母親が死ぬシーンの方が生々しく、残虐極まりないだろう。

暗礁に乗り上げた『日本沈没 1999』は阪神大震災の経験談や知見が活かされる予定だったと聞く。戦争経験者によって作られた73年版『日本沈没』を超える意味でも、被災経験≒痛みを知る方々の声を取り入れて欲しかった。とある新婚夫婦の件もオンリーワンな物語というには在り来たりで消化不良な感じ。
鎬一喜

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