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奈落のマイホームのおはぐのレビュー・感想・評価

奈落のマイホーム(2020年製作の映画)
3.8
平凡なサラリーマンのドンウォンは11年間の節約生活の末に、ソウルの一等地にマンションを購入する。念願のマイホームに家族と引っ越した彼は同僚を招いてパーティを開くが、大雨で巨大陥没穴[シンクホール]が発生し、わずか数分でマンション全体が飲み込まれてしまう。反りの合わない隣人マンスや部下たちと共に地下500mまで落下したドンウォンは脱出するべく手を尽くすが、さらなる大雨によって穴は水で満たされていく…。


filmarks試写にて観賞。巨大陥没穴に新築マンションごと落下してしまうという考えるだけでも恐ろしい設定のディザスタームービーでありながら、住人や同僚とのコミカルな掛け合いによってかなりコメディテイストに仕上がっており、肩の力を抜いて楽しめる作品になっていました。ただ、会話劇によってコミカルに描かれているとはいえ、大きな呻き声をあげながらマンションごと住人たちを地の底へ引き摺り下ろす自然災害描写は恐ろしく、落下した陥没穴の中でも次々と災難が降りかかる描写に震え上がりました。

本作は、韓国で1年に平均900件、その内首都ソウルで発生する可能性が78%を占めるシンクホール被害や、なおも高騰し続ける不動産価格の問題など、韓国で実際に起こっている社会問題を作品内に取り込んでいます。不動産価格の高騰は、雇用や子供の教育・進学を理由とした首都圏への人口集中だけでなく、隣人マンスも利用していた韓国特有の不動産賃貸借制度チョンセに起因した不動産投機が大きな原因となっています。政府が様々な政策を打ち立ててはいますが、直接的な解決には至らず、いつ不動産バブルが弾けてもおかしくない状況が現在も続いています。ようやく手に入れた夢のマイホームが突如発生したシンクホールによって奈落の底へ真っ逆さま…というこの恐ろしい設定の物語が、実際にも起こりうるかもしれないというのが本当に本当に恐ろしいところです。

巨大陥没穴に落ちた新居から、生存者で助け合って地上を目指すという脱出劇に重きが置かれているため、キャラクター1人1人の背景描写が薄く、会話の中の一言二言でしか説明がないので削除されてしまったシーンがあるのであれば是非観たいと感じました。主人公ドンウォンたち家族の11年にも及ぶ節約生活、仕事を掛け持つ隣人マンスの過去回想などなど、シーンを足してほしいところが多々ありました。

作中に登場した鶏の泥包み焼きこと、叫化鶏(ヂャオホアヂィ)がとても美味しそうで上映中お腹が鳴ってしまいました。日本でも食べられるのであれば、ぜひ食べてみたいと思いました。
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