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奈落のマイホームのcocacorgiのレビュー・感想・評価

奈落のマイホーム(2020年製作の映画)
3.0
今の韓国映画はもれなく格差社会を描くと見聞きしたような全く定かじゃない記憶がある。その象徴たるマイホームが半地下のさらにもっと地下深くまで一瞬にして落下する構図はまさにそれなんじゃないかと多少構えて、けど思ったより社会派は薄く感じた。
夢の暮らしの足元がどれだけ不安定であるかの具象がそのまま視覚に伝わるものはある。マイホームも当たり前じゃなし、近々のシンクホールは本当にある日突然人の手によって誘引されて。(諸説あり)
当たり前に手に入るものもそうじゃないものも当たり前に誰かのいけずか不注意か無関心でポッと消える。階級に関係なく。
上の一家と階下の使用人もその地盤によっては上下も主従もクライアントもサーバーもリッチもプアも一切合切意味がない。なら常日頃からもっと対等で良いじゃない、ってロジックは全然間違ってないけどちょっとユルい。社会派じゃなく理想派。理想が基底に無いと現実を笑えないそんなコメディちょいファンタジー。




家族の学費のために週8≦働いててやっぱり明るくてちょい抜けてる風な優しい雰囲気でいつも笑ってて、親いないからってバイト上がりにスーツ着るただの学生。ただの先輩。思い出して、キムチ兄の存在だけ至近距離。
全て子の為に、を無条件で基準にしてた人が土壇場に知らん誰かの為ェ…ってなった時のモチベのバグ。優先順位のストックが無い。バグってパニクる姿は滑稽にも見えるけど、だからコメディとは言い切れないしそれでもコメディって言う。
利己を差し置いて行動する事には慣れてて動き出せれば迷いがない。強運でもなく、コメディだからもなく、それまでの徳か業の積み重ねの因果に見放されなかったキムチ兄。好きは違うが絶対に嫌いになれない。
親、親を想う子、巻き込まれた同僚、使用人、夢が一瞬で陥落した人、帰りを待つ側、説明のつかない事象に導かれた人、非日常に大切な者を見つけた人ら、どこに重なるかで笑いも絶望も忌避も感動もロマンも爽快も、受けるイメージが全然違うことに楽しみを見出すか、ただ笑えない不甲斐なさに嘆くか。
集合住宅そのものをマイホームと見做してもバチは当たらない。かも。


メモ: チャスンウォン 普通にカッコいい 胡散臭い 脱いだらすごい
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