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青春の殺人者のListenerのレビュー・感想・評価

青春の殺人者(1976年製作の映画)
3.8
(116分版)長谷川和彦監督作は昔に『太陽を盗んだ男』を観て以来。…これで全部じゃないか。ゴダイゴの「想い出を君に託そう」に合わせてタイトルがでた時に、あ〜この映画を観て良かったなあという感情が早々に湧いてきた。

両親との微妙な距離感は少しわかるなあ。わかり合えないけど思い出が邪魔して決別できない感じ。優しさというべきか弱さというべきか。自分が進むべき方向を決めきれない順の鬱屈した姿や、時々映る開港前の成田空港からは、どこかアメリカン・ニューシネマのような味わいがあった。当時の空気感を知っていればもっと面白かったかもしれない。

正面から捉えた市原悦子の顔!既視感は『蛇の道』(オリジナル)のコメットさんのショットだろうか。若い頃の水谷豊は格好良いね。 桃井かおりはチョイ役なのに癖が強すぎるだろ。

ATGなのにこんな撮影できるんだと思って観ていたが、ばっちり予算オーバーしていたようだ。Wikipediaにある今村昌平のエピソードは笑った。上述の『蛇の道』の件もそうだが、監督の系譜をたどりながら映画を観ると面白い。

しかしこういう昔の映画を観に行くと、自分と同世代もしくは自分より若そうな観客はまず居ない。中年と高齢者ばっかりだ。配信で見られる状態にあるとはいえ、一握りの超有名作品以外はこうやって埋もれていくのだろう。昔の作品を後世に残したいなら、観られる機会だけでなく、語り部のような存在が必要だと思う。
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