くりふ

Jefferson Circus Songs(原題)のくりふのレビュー・感想・評価

Jefferson Circus Songs(原題)(1975年製作の映画)
3.5
【こどもサーカスの箱庭】

スーザン・ピットの、驚愕アニメ『アスパラガス』前作に当たる短編。初見のときはあまり感心しなかったが…改めてじっくり反芻すると、これ、イイネ!楽しく撮っているじゃん。…その奥から、どうしても昏さが漏れてきますが。

老女が時をかける列車に乗り、もはや車窓の外である少女時代の幻想に浸り、また戻る。

次の『アスパラガス』では、好きなだけ男根を弄びますが、本作では少女に回帰し、そのガーリーな箱庭から出ようとしません。なんでもこの時、私生活では不倫に悩んでいたとか。映画づくりがセラピーになっていたのか?昏いが、のびのびする様が伝わります。

出演者はみな子供で、先生をしていた絵画教室の生徒らしい。子供だけのサーカス運営ってどんなん?を描き、また舞台を見せることより、サーカス団の日常をスケッチしています。

サーカスの舞台は2Dアニメで描かれ、そこだけオトナが登場。不条理な芸?を晒します。冷ややかに眺めるコドモ。彼らには“産む”ことさえ不条理でしょう。お悩みスーザンはそんなコドモに託して、オトナの醜悪さ=自分の醜悪さから、ひととき退避したかったのか?

“こどもピエロ”は延々と遊び続け、“チェシャ犬”は彼らをおおきな眼差しで包み続け、コマ撮りの夢が詰まった幻燈の箱庭は、ずうっと光り続ける。

だから老女が現実に戻るなら、車窓から身を離さないといけないし、スーザン・ピットはそのようにするのでした。めでたし…かな?

『アスパラガス』が『イレイザーヘッド』と二本立てで受け入れられたことは物凄く納得するのですが、『イレイザーヘッド』の前作に当たる短編『グランドマザー』と本作に、“コマ撮り黒箱庭”という共通点があること等も、共時性としてオモロイ…と感じ入りますね。

<2022.9.25記>
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