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Striding Into the Wind(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Striding Into the Wind(英題)(2020年製作の映画)
2.5
[中国、ある不良学生の日常風景] 50点

カンヌ・レーベル選出作品。ウェイ・シューチュンは短編『On the Border』でカンヌ映画祭短編部門で審査員特別賞を受賞した経験があり、その繋がりでレーベル選出に至ったようだ。加えて、本作品はアリババ・ピクチャーズが全面出資した初のアート映画ということで、気合の入り方は十分だった。主人公は少し前のウェイ監督と同じく、録音技師を志している青年クンである。彼は同じことを長く続けることができず、気ままに過ごす性格のようで、冒頭は運転免許試験が上手くいかずに途中で投げ出す姿が描かれている。そして、同じ映画学校の友人でやる気のないトンとつるんで、中古のオンボロジープで内モンゴルを旅する夢を見ながら、適当に街をブラブラしている。来年には勝手に廃車になってそうなジープを改造するために変なバイトをして金を集め、教師である母親から試験問題を盗んで生徒に売り飛ばし、対立している音響効果授業の講師と授業中にバチバチやりあい、彼女からは半分以上呆れられながらもなんだかんだ付き合いが続いていた。

本作品には特に相互作用のないバラバラの挿話が数多く並べられていて、目的のない人生を送るクンとトンの二人とふわふわとした130分の時間を共有する。クンの彼女が働く高級ホテルのイベントで暴れる書道家の挿話や、環境音を撮っているときに後ろでずっと喋ってる監督に殴りかかる挿話、全く売れない歌手に押し付けられた大量の自作CDをフリスビーに見立てて遊ぶ挿話など多少面白く撮った挿話もあるものの、基本的にはダラダラと時間が流れるだけで日常生活を撮った気になっているとしか思えない。これについて、作中に気取った映画監督志望学生ミンを登場させ、"ウォン・カーウァイは日常生活をそのまま撮るんじゃなくて草の揺らめきで表現するんだ"と言わせており、明らかに対抗意識を覗かせているのが分かる(ウォン・カーウァイの映画にそんなシーンがあるかは知らない)。しかし、画面も物語も弛緩しきっているので、流石に対抗は出来てないと思う。

映画の終盤で、ミンの映画を撮るために内モンゴルへと旅することになるんだが、改造したジープも役に立たなければ、免停がバレたり女優から遅れた分の給料を払ってほしいと言われたりと夢が叶った感じもしない。そういったズラしは面白いんだが、急激な失速に巻き込まれて上手く機能していなかったのが残念。
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