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GAGARINE/ガガーリンのkupaのレビュー・感想・評価

GAGARINE/ガガーリン(2020年製作の映画)
3.9
人類初の宇宙飛行士の名を冠したパリ郊外の老朽化したアパートを舞台に、取り壊しを前に1人取り残された少年が、内部を宇宙ステーションに見立てて暮らす姿が儚くも美しく描かれる。

アフリカ系移民の16歳の少年ユーリは、母親が恋人の家に入り浸りのため団地に一人暮らし。団地の存続のためコツコツと団地内の故障箇所を修理して回るような前向きな少年。

そんな彼の努力も空しく老朽化した団地は取り壊されることに。

住民は次々に団地を離れていくが母親に見捨てられたユーリは行くところもなく団地に取り残される。

団地内から資材をかき集めると宇宙ステーションに見立てて改造を始めるユーリ。植物も室内で育てるなど一つの独立した生態系が築かれていく。

そんなユーリの心の支えはロマの少女ディアナとの淡い恋。団地の補修部品を探す中でスクラップ置き場に暮らす彼女の一家と出会う。

団地とスクラップ置き場のクレーンとの間で、ライトの灯りでモールス信号をやり取りするシーンが猛烈にエモい。

2024年のパリ五輪を控えスクラップ&ビルドが繰り広げられている現代のパリの風景と60年代の宇宙開発競争華やかななりし頃の夢のあった時代との対比が絶妙なバランスで描かれている。

そしてその物語の中心となるのが移民2世の少年だというのも象徴的。
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