Jun潤

七人樂隊のJun潤のレビュー・感想・評価

七人樂隊(2021年製作の映画)
3.6
2022.10.11

予告を見て気になった案件。
香港の監督7人がそれぞれ物語を紡ぐオムニバス作品。
邦画でも『MIRRORLIAR FILMS』シリーズなどがありますが、初のこの形態の作品がまさかの中国映画。

普段はまずあらすじから書いていきますが、今作はオムニバスな上に全7編と、書いてたら大変な長文になりそうなのでまた割愛。
しかし短編映画となると序盤でキャラに愛着が湧くかどうかで話への入り込み方も変わるし、少しでも出足が遅れたらキャラを好きになりそうになるところで終わってしまうので、個人的には鑑賞が難しく感じました。
濱口竜介監督の『偶然と想像』ぐらいの尺が合っているのか、バラバラの監督というのにまだ頭が合わないのか、これはこれで探求しがいがありますね。

個人的には#1、#5、#7がよかったかなと思います。
程度の差はありますが、大雑把な所感として全体的に「学び」と「教訓」が軸になっていたと思うところがありました。
やはり#1からサボっていたために罰を受け、「光陰矢のごとし」から続いて過ぎた時間は戻らないということを、シンプルな舞台と簡潔な描写のみで如実に表現していたことからそのような印象を受けましたかね。

#5でも、なかなか決断ができずにいたものの、株の売買を実行に移さなかったことから、やらない後悔と実際に動くことのリスクヘッジの両方を描いていて、これもまた「教訓」な感じがしましたね。

#6でもそれらを違う見せ方で描いていて、先祖が蒔いた種を子孫が発芽させることはできたのか、自分が働いて築いてきた社会の地盤には違うものが建っているかもしれないけれど、息子への愛情はちゃんと受け継がれていたという、ミクロ的な視点の「学び」と「教訓」が描かれていたと思います。

#7は雰囲気から設定までガラッと変えていて、SFかと思いきやなかなかクセの強いメタフィクションコメディでした。
物語自体も困惑からそれが解ける流れができていましたが、作品ごとにクレジットを入れていたことで全体の仕掛けがわかる構成もかなり粋でした。
香港映画に馴染みがある人からしたらすぐにわかることなのかもしれませんが、馴染みの薄い僕でもなんとなくわかる塩梅になっていてよかったですね。
Jun潤

Jun潤