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スラローム 少女の凍てつく心のhasisiのレビュー・感想・評価

3.6
フランス。
ウインターシーズン。スキーで豊かな才能を発揮するリズは、15才の少女。
名門スキースクールへの入学を許可される。親元を離れ、プロの道を目指すのだが。
そこで元スキーチャンピオンのコーチ、フレッドと出会い、様々な苦悩を体験することに。

監督は、シャーリーン・ファビエ。
脚本は監督と、マリー・タロン。
2020年に公開されたスポーツ・ドラマ映画です。

【主な登場人物】🏔️🥖
[キャサリン]母。
[ジュスティーヌ]金髪。
[フレッド]コーチ。
[マックス]男子選手。
[リズ・ロペス]主人公。
[リルー]コーチの補佐。

【概要から感想へ】🎿🌨️
ファビエ監督は、1985年生まれ。フランス出身の女性。
2014年から脚本を書き始めて、脱稿まで3年かかっている。
世界有数のスキーの中心地であるヴァルディゼール育ちで、元スキー競技のプレーヤ。
彼女の生い立ちが大きな影響を与えた半自伝的な作品に。
今回が長編映画監督デビュー作です。

⛷️〈序盤〉🏊🏻‍♀️🚿
グレーゾーン。
昨年のなでしこリーグでのセクハラ告発に代表されるような、コーチの女性選手に対する行き過ぎた指導内容を、そのまま映画にしてある。
コーチも選手も実在しているかのようにリアル。
世間を知らない10代の子が必死に食らいついてゆく姿を見せられて複雑な心境に。

前時代的な価値観と、結果を残せるコーチングが紙一重で。
メダルを獲得すると名コーチで、訴えられるとセクハラコーチに。
フレッドは雄であり、野生動物のよう。
カリスマ的で心惹かれる側面と、酷すぎて表情が歪む要素が混在。
善悪の判断は観客に委ねてある。

⛷️〈中盤〉🌘🚗
スリラー。
どこまで行っても男女の関係。
上手くいってもいずれ崩壊するのでは?
でずっとドキドキさせられる。
落ちると骨折するロープウェイからの景色や、浮かれたドライブなど。意図的に行われている。

スキー競技そのものが、スピード感があってスリリングだし、監督の中で命のやり取りに中毒的に惹かれるものがあるのだろう。
恐怖が好きでたまらない人の方がスリラーやホラーの監督に向いているから、病的なジャンルではある。

⛷️〈終盤〉🪟🔴
男女の関係。
女性選手視点だと恋愛も恐怖に。
男怖すぎ。
いかに男性主導で、腕力で勝っていて、女性が翻弄されるのかが分かる。
本作を鑑賞すれば女性に優しくなれると思う。

試練の先。
辛い人間関係を乗り越えて大会に向かうので感情移入度も半端ない。
ふだんテレビ中継では知りえない表舞台の裏側。選手一人ひとりに物語があり、
競技も違って見える。
ドキュメンタリーでも知りえない。パーソナルな部分が体験できて、
競技経験者ならではの内容に。

【映画を振り返って】⛄🚡
ドキュメンタリータッチのドラマ。
スキー競技の現場を実際に撮影しているような臨場感がある。
コーチと選手のやりとり。
よほど実際の競技を研究したのだろう、試合に出場している選手の姿をカメラで追っているかのよう。

🧣集合体のもたらす回復力。
10代の少女が誰にも相談できず。やがて大人になり、それを映画にして解き放っている。
自伝にしてしまうと直接的で、実在の人物への迷惑や、人間関係にひびが入ってしまう。
それを多くのインタビューによるエピソード集にすることで、特定の人物にせず。抽象的な主人公が誕生している。
あえてフィクションの領域に傾けることで、トラウマと適度な距離感を保てていた。

❄️過酷な青春。
コーチとしての正しさと虐待、のような対立構図を脇において。
自分の若い頃を振り返っている。
こんな人生もあるか、と知らない世界を伝えてくれている。

主人公リズの台詞が少ないので分かりにくいが、監督からの明確なメッセージがあって、それは意識していないと、さらっと駆け抜けてしまうほど一瞬で。
理由は、苦手な題材に取り組んでいるから。
時には自分の性分をまげてでも、立ち向かわなくてはいけない時がある。
大人になって過去を振り返る監督が、現在進行形でコーチングを受けている10代の子たちに向けたメッセージ。
ミートゥー運動に繋がってゆく、時代の転換点を滑走する。
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