【 流れる音楽とフランス文学が好きな人に 】
"昨年の9月以降、私はある男性を待つ事。彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つ事以外、何ひとつしなくなった… "
… 映画はシングルマザーの女性教師が妻子あるロシアの年下外交官の肉体関係、それ以外は彼をひたすら待つ(探す)という時間を淡々と描いたドラマ。しかも原作小説を書いたフランス現代文学女流作家アニー・エルノーが実際に体験した物語ということ。
その小説を映画化した作品には多用されるクローズアップ、窓ガラスに重なるように映る主人公の顔と木々、高速道路を走る車、「ヒロシマ・モナムール」が上映されるパリのカルチェラタンの映画館やカフェの風景、台詞を排除して主人公の心情を音楽に変えて表現する手法など、ドラマは単調なのに映像ならではの楽しみ方はあって最後まで観てしまう、そんな映画。そしてフランス語、時折英語によるふたりの愛の囁きも心地よい。ただし、息子さんが不憫で…
ロシア外交官を演じるセルゲイ・ウラジーミロヴィチ・ポルーニンはバレエダンサーでウクライナ・ロシア・セルビアの多重国籍者。そして役づくりかと思った全身タトゥーは本物だった事には驚き…
<付録 : 映画に使われた曲>
どれも作品中でいいスパイスになっていたし、カバーや英語やフランス語やイタリア語版などを使い分けるセンスも好きではあった…
"Only you" by the flying pickets
https://youtu.be/HFdZ99ZmIUs
"If you go away " ←素敵すぎる!
by Hellen Merrill & Stan Getz
https://youtu.be/gAHE8LIbyzo
"I want you " by Linda Vogel
(ボブ・ディランの曲カバー)
https://youtu.be/pzGEEYs0Y1M
"The stranger song "
by Leonard Cohen
https://youtu.be/ZqlR5D0y23s
" C'est Merveilleux L'Amour "
by Gilbert Bécaud
https://youtu.be/Tv3wN64TU-Q
<追記>2022年10月7日
原作のアニー・エルノーが2022年のノーベル文学賞を受賞したというニュースに驚き。受賞理由として「個人的な記憶のルーツや疎外感、集団的抑圧をあきらかにする勇気と鋭さ」という事に、納得。