最近見た中ではかなり好きな作品。
フランス映画の可視的な抑揚の無さが
昔は苦手だったが
本作はむしろ小気味良く感じる。
演劇を楽しむということに触れ、
改心向かうように見せて
次第に欲が出ていく様へと
ぬるっと移行していくリアリティ。
根っからの性悪でないにせよ、
刑務所生活のあまりの無機質さから解放された
囚人の感情の昂りは
演技に昇華されてもなお余り、
無性に消費したくなるのである。
分かりやすい欲望にぶつけるのであればいざ知らず、
美容院に行くためだけに脱走するのだから
全くもって想像が追い付かない。
ラストは笑ってしまうほど
気の抜けたような結末だが、
この独壇場は
囚人のエモーショナルな場面だけ切り取り
理解した気になっている観客への
重大なアンチテーゼが含まれている気がする。
