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殺人捜査線のHKのレビュー・感想・評価

殺人捜査線(1958年製作の映画)
4.0
これは当たり。ドン・シーゲル監督、イーライ・ウォラック主演のノワール。
原題“The Lineup”(ラインナップ)には警察が容疑者を並べて行う“面通し”の意味も。
本作は人気TVシリーズからスピンオフした劇場版だそうで警察側はレギュラー・キャラらしいものの本作の主演は今回限りの犯罪者チーム。

序盤、白昼のサンフランシスコ市街でいきなり事件発生、ドキュメンタリー・タッチのスピーディな展開に一気に引き込まれます。
事件は麻薬絡みとわかり警察が捜査を進める中、麻薬密輸組織の怪しい2人組ダンサー(ウォラック)とジュリアン(ロバート・キース)の登場は映画が始まって20分以上も経過してから。この2人、同じくシーゲルの『殺人者たち』の殺し屋2人組を思い出します。

デビュー間もないウォラック(当時43歳)はマカロニ・ウェスタンの憎めないキャラとは大違いでコミカル要素はゼロ。すぐにキレてトランクからサイレンサー付の銃を出して人を殺しまくるサイコキラー。
それを諫める頭脳労働担当の相棒キースとの掛け合いも面白い。
3人目の運転担当はリチャード・ジャッケル(『ワイルド・アパッチ』『特攻大戦略』)。

ある目的から小さな女の子と母親の親子に近づき、初めは親切を装い部屋に押し入ってからの2人の豹変ぶりは鬼気迫ります。女の子は泣き出し、初めは気丈に振舞っていた母親が狂暴な顔つきに変わったウォラックらを見て恐怖に蒼ざめる過程がリアル。
見ていて心配になるくらいの子どもへの乱暴な扱いは今ではNGじゃないだろか。

ウォラックが車いすの相手を高所から蹴落とすシーンは、『死の接吻』のリチャード・ウィドマークが車いすの女性を階段から突き落とすシーンと同じくショッキング。
クライマックスの高速道路でのカー・チェイスも印象的。

ちなみに本作の6年後に『殺人者たち』、その4年後に『刑事マディガン』、さらにその3年後が『ダーティ・ハリー』、本作はこれらシーゲル監督のノワールの原点とも言えそう。
シーゲルが『ダーティ・ハリー』より前にサンフランシスコが舞台のノワールを『続・夕陽のガンマン』のイーストウッドの盟友ウォラック主演で撮っていたとは。
脚本はデビューし立てとは思えないスターリング・シリファント。

「今日は大変な1日になるぞ」
「大丈夫、4時半までには全て終わってるさ」
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