「平等は可能だ」と綴られたバイブル。
言うまでもなく、「平等」の意味への理解は十人十色。
「人数の町」において実現した「平等」概念も、町の管理者の解釈が反映されている。
町では、選挙や商品レビューの数にカウントされる限りで価値のある「1人」として、平等に扱われる。
主人公は終盤、代替可能な数字としての生き方を捨て、「あなたでなければダメなんだ」という排他的な愛に生きたいと志す。
結局、町との関わりを完全に断つことはできなかったが、求める生き方をなんとか確保する。
その生き様は、荒木監督の人生にも重なるか。
広告業界を経て、50歳で映画監督としてデビュー。初の映画作品である今作のラストは、映画への思い入れが強い(それは愛と呼ぶかもしれない)監督がたどり着いた一つの解の提示ではないだろうか。