自分達が何に加担させられているのか。何の片棒を担がされているのか。その中身は明らかにならないが、実際の私達も割とそういう感じかも。優れた現代社会の批評、もしくはおちょくり。あの町が何のために存在しているのかという物語全体の謎は後半で判明するが、本作において最も重要なのはそこではない。むしろ、あの町の住人のような「無知」であることに疑問を抱かない姿勢が特別なものではなく、私たちもそういう存在なのかもしれないと暗示させる点だ。たとえば、絶賛タイムやdisタイムの書き込みにおいて、その中身がなんなのかは書いている本人にも明らかにされない。それでも私腹を肥やすために書く様は、Twitterで見出ししか見ないまま批判を繰り返すどこかの誰か(もしくは私か)のよう。状況説明は必要最小限の台詞でなされており、話運びは手際が良い。絵面こそチープだし、もっとエグみある描写があって然るべきなのでは?とも思ったが、シリアスな社会風刺というよりダークコメディにしたかったのだろうな、という印象。だけどもうちょい行ける所まで行ってほしかったな……陰惨さが増せば増すほど「笑うしかない」ムードも強まるはず。
キャスト陣の演技は素晴らしく、先に挙げた物足りなさや食い足りなさをカバーしている(カバーしきれているとは言えないが)。特に主演の中村倫也。会話する際の「えっ」とか「あっ」の空虚さにリアリティがあってとてもよかった。彼はあの町に来る前も、抜け出した後も空虚なだけ。なんとなく目に入った人の感情に同調するだけの空っぽさを表現するのが上手い人だと感じた。
最後に。パンフレット売り切れなんすね……めちゃ人気やん……