このレビューはネタバレを含みます
軍が政治への影響力を持ち始めた30年代を経て、街中に軍靴が鳴り響く1940年。
重大な国家機密を知ってしまった優作と、彼の正義を支える妻 聡子の物語。
日常の中に違和感を乳化させ、そこから自分のテリトリーへと誘うのが巧みな黒沢監督の手腕は本作を冴え渡る。
フィルムに写り込むセカイが、光の射し込む窓の向こうに現実として広がる。
至極、平面的な画角にも関わらず、入退場を繰り返す優作と純度と深度を併せ持つ聡子がその世界に仄暗い奥行きを構築している。
癖のある役どころが嵌る高橋一生と硬軟自在の蒼井優が息ピッタリで、不穏な作風を2人だけの純愛劇にする爽快さ。
お見事です。