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スパイの妻のEDDIEのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.7
お見事!と言わざるを得ない先を読んだ優作の行動に唖然。妻の聡子役の蒼井優の静と動の極端にして圧巻のパフォーマンス。黒沢清作品常連の東出昌大も恐ろしく冷徹な目が印象的。役者陣の見事な演技に比してややスケール不足な×スパイ⚪︎純愛映画。

改めまして黒沢清監督、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞おめでとうございます!

本作は蒼井優と高橋一生のW主演にて、1940年代の社会背景に翻弄される2人の夫婦役を演じた作品でございます。
主要キャストの演技の存在感がハンパなかったですね。
妻の福原聡子を蒼井優、夫の優作を高橋一生が演じるほか、聡子の幼馴染みにして現・神戸憲兵分隊本部の分隊長・津森泰治を東出昌大が演じました。
三者三様ながら皆が圧巻の演技を見せつけてくれました。
蒼井優はさすがだなと思わせましたが、東出昌大が特に印象的でした。初登場の優作との会話シーン、国家を背負う人間としての彼ら夫婦に疑いの目をかけて以降の変貌っぷり。いやはや、本作の言葉を借りると“お見事”としか言いようがありません。

内容的にはタイトルにもある“スパイ”という要素は、果たして優作はスパイなのか否かという疑いがあるのですが、それは本質ではなく、いかに妻の聡子が夫の優作を愛しているかを物語全体で表現する純愛物語でございます。
いやはや、あそこまで愛されてみたいものですな。優作はなんという罪深い男なのだろう。

冒頭にも記載したとおり、映画というスケールで考えると、やや迫力不足でテレビドラマの質感が拭えませんでした。
実際のところ今年6月にBSで放送されたドラマ版をスクリーンサイズと色調を劇場用に変更して劇場公開したとのこと。
まぁNHKということで仕方ないのかもしれませんが、本当にNHKの時代ものを大きな劇場のスクリーンでただ観ているという感覚でした。

とはいえ、ラストの観客に想像を委ねる手法は見事だと思いました。欲を言うならば、それを映像で見せてほしかった…。

『散歩する侵略者』で新しい一面を見せてもらった恒松祐里は、福原家の使用人の駒子という役柄でしたが、『散歩する侵略者』ほどの狂気的な配役ではなかったのが残念。ですが、彼女の清純そうなキャラクターに合ったとても無垢な役柄でした。

※2020年劇場鑑賞128本目
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