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スパイの妻のdxdxdのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
4.3
1940年の神戸舞台に国家機密を知り、告発しようとする夫と、危険を顧みず彼を支えようとする妻の話だけど、スパイモノというよりは夫婦2人のラブゲームだった!
こういう黒沢清映画、いや日本映画を観たかった!

「731部隊の秘密を告発する!コスモポリタニズムだ!」と、高橋一生演じる優作は息巻いていたけど、どちらかというと超純粋で、超個人主義で、妻ののことなんて毛頭考えていなかった。でも、なんとか、聡子が優作にとって不可欠な存在になろうと迫っていき、ついに共犯関係になった恍惚とした表情と言ったらもう!無垢な男と、情念剥き出しの女のパワーバランスが絶妙に変化していくシーソーゲームだった。そして、迎えるある結末も心底震えた。

この辺りが、脚本を担当していた濱口竜介、野原位のほんのり『ハッピーアワー』を思い出した。映画秘宝のインタビューでもあったけど、嫉妬から物語が始まるのはこの二人じゃないとなかった発想。男女のコミュニケーションによって生じる、不和とそれが閾値まで行って、破滅してしまうのは『ハッピーアワー』と共通する部分かもしれない。

でも、戦争という存在を直接的に見せず、気配というか空気感だけで見せるとことか、ラストの扉を開けた向こうのあの世界の成れの果ては、『カリスマ』っぽくて、めちゃくちゃ黒沢清的だった。あと、『旅のおわり、世界のはじまり』の中盤の絶叫アトラクション(a.k.a処刑マシーン)があったけど、今回も拷問シーンがあった。もう癖なんじゃないかな。

あとあと、蒼井優の昭和の名女優を彷彿とさせる台詞回しとか凄まじい!

素晴らしい内容なのに内容と規模感からしたら限られた予算で撮ってるのが凄い。いだてんのセットとかで撮っているって後からインタビューで知ったけど、言われなかったら全然分からなかった。いやあ、今年を代表する日本映画の1本かと!!
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