あさ

スパイの妻のあさのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.7
何様目線ですが面白かった。

まず蒼井優が一言喋り出した瞬間から良かった。話し方、所作から伝わる昭和の空気。邦画避け避け人間だった私には『るろうに剣心』のイメージくらいしかないけど、この人の演技は記憶に残る。
そこに高橋一生が加わるとなんとも演劇みたいな描写に見えて。忘年会終わり、2人きりのオフィスで夫婦が話すシーンは特にそうだった。映画を見ていたはずなのに、突然舞台に切り替わったかのようで。不思議。あとは結構カットが少なくてショットが長め、顔を写すシーンが少ないからこそ急にドアップになると息を殺す迫力さえあった。言い過ぎ?

話自体もなかなかに面白く、見てる間ずーっと『スパイの妻』というインパクト大なタイトルの意味を考えてしまう。正直、終わり方はもう少し手前で切ってしまっても良かったとも思うけれど。

事実として関東軍が大陸で人体実験やらをやっていたことはあって、実際に戦地に行っていた方が、「人を人と思わないためにウサギを殺して心を入れ替えていた」という話も聞く。
日本史の教科書だけではわからない、自国の暗い歴史。戦争映画をみればヒトラー批判の映画は五万とあっても、日本のこういう部分に触れる作品ってそう多くない気がする。

しかし、しかしだなあ〜。戦時において正義を貫くことの難しさ。拷問見たらすっかり肝が冷えてしまったよ。(爪じゃなくて睾丸取ってるのかと思った。)
客観的に見ればどちらが惨いことをしているのか、ハッキリわかるのに。「お国のために」という言葉は万国の呪いだ。

それと、私は優作さんが聡子を行かせないために告発して自分1人で旅立ったようにも思ったけれど。優作と一緒にいることが生き甲斐ですらあった聡子にとって、それは殺されるよりも辛い選択であって。それをわかっていて、優作さんがあの決断をしたのは聡子を愛していなかったからなの?それとも、愛していたから守ったの?「お見事」の意味を私はすべて咀嚼できていないな。
あさ

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