スコセッシフォールド全開

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのスコセッシフォールド全開のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

マイルスは"本来スパイダーマンになるはずではなかった存在"と告げられる。黒人はスパイダーマンになれない、アリエルになれない、ボンドになれない…と言われてきた昨今の人種差別問題にどうしても重ねてしまう。故に、"かまいたちのポイントカードネタ"理論に怯え、固定観念に囚われた他スパイダーマン(マジョリティ)との対峙の構図は、その点の高い再現のようで熱い。それなら世界が壊れても構わない、の大いなる決意表明。時代の再起だ、ではなくそれが宇宙誕生から普通であった。グエン父の署長辞退、警察官辞職が、運命に逆らう新たなスパイダーマン物語としてやんわり挿入されているのも、一縷の望みとしての布石と考えればとても綺麗。

長い長い序章だった。次作の期待が高まる。内容次第ではスコアを変動させる。

情報量が凄かった。凄かったなぁ、ぐらいの印象で感動はなかった。むしろマルチバースのごちゃごちゃ感で見にくかった(何度でも見れば良い)スポットのダークサイド描写がベスト。
『お前か?』の、お互いに指差すユーモアとその場にいる全員が同じタイミングで同じ行動を取るくだりは旧来のスパイダーマン像としても、そしてマイルスの異端感の強調としてもアリで面白い。ただその後の追いかけっこに"余裕さ"ではなく"必死さ"を全面に押し出してしまうのは、キャラクターの死、ロボットのように見えて不味い。
極端に味方がいないのもそれを助長していて、NWHは"シンパシー"に大きな役割があったので違和感があった。


それよりもスパイダーパンク(ホービー)がとんでもなくいいキャラクターをしていて最高だった。善悪での判断ではなく、劣勢だが負けず熱いやつを支持する姿勢がカッコ良すぎる。生き方が好き。

あの5人があの世界に来たのはただの偶然だった。別宇宙でも時空間移動イベントが起きていた、という説明にしっくり来た。