CHEBUNBUN

Train(英題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Train(英題)(2017年製作の映画)
5.0
【出産まであと僅か!鴛鴦夫婦は荒野を大爆走!】
Peter Sedufia監督はガーナにある国立大学National Film and Television Instituteで研究をし、アフリカの新鋭監督を育成するTalents Durban2016に参加しました。その後、テレビシリーズ『Master and 3 Maids』を手がけ、『KETEKE』でデビューを果たします。KETEKEとはアカン語で《電車》という意味で、本作の中心的存在であります。既に新作ギャングもの『Sidechic Gang』も発表し、映画監督としての道を歩み始めている監督です。

さて、そんな『KETEKE』について語っていきます。


郊外へ出るには電車に乗らなくてはいけない。大きなお腹をしたATSWEIとアフロヘアーのBOIは駅を目指して歩く。電車が来てしまうので走り始める。コミカルなガーナの民族音楽が流れるのだが、それとは裏腹に疾走感0のノロノロとした動きで駅を目指すのだ。無理もない。走っているのは紛れもない妊婦なのだから。当然ながら列車は来てしまう。プォーーーンと汽笛がなり始める。焦る夫、「頑張れ!走るんだ!」と妻に言い聞かせるのだが、妻は線路で仁王立ちを始める。「ここで立っていれば、列車は停まるはず!」と言い始めるのです。肝っ玉母ちゃんに対して、腰抜けお父っちゃんは、「轢かれるぞ!」と言い聞かせ、再び走り出す。当然ながら、列車に抜かれてゲームオーバーとなる。

「あたいは、もう疲れたは」と線路に座り込む妻。一気に険悪なムードになるかと思いきや、ジョークでなんとか妻を和ませようとしまう。そして妻はそのジョークにカウンターを入れていく。その鴛鴦夫婦コントに癒される。詰まる所、夫婦生活とは長い長いロードムービーだ。喧嘩もするけれども、二人で人生を共に歩んでいくものだ。始発に乗り遅れたこの夫婦の珍道中は夫婦生活の面白さ、尊さを教えてくれる。それも抱腹絶倒なギャグを持って。


夫婦は食料を目指して怪しげな集落に、突撃お隣の晩御飯をしに行く。しかし、出会い頭、村長が妻を自分の女にしようとし始める。夫は「ちょっと待って、お兄さん、彼女はあんたの女じゃねぇ。おいらの妻だ。そこんとこよろしく。」というのだが、眼光鋭い僕と共に、不穏な歓待がが始まるのだ。

そして夫婦のの爆走人生も終盤に差し掛かり、妻はついに線路に倒れ、今にも出産しそうな状態に陥ってしまう。そこへ偶然通りかかった別の列車を引き止め、野郎数人がかりで妊娠を手伝う。しかし、どうやって赤子を取り出せばいいのか分からない野郎どもは「そうだ、歌を歌おう」などと様々な工夫をしながら妊娠の手伝いをし始めるのです。こうも、陽気で面倒見がよくて、人情味溢れる人間を観ると幸せになる。なんたって、今の日本にはない情がそこには溢れているのだから。

そして映画は当然ながらハッピーエンドで終わる。シンプルな一直線の映画ながらも、本作はアフリカ映画にありがちなエキゾチズムに寄りかかることなく、珍道中を通じて普遍的な夫婦仲を紡ぎ出した。Peter Sedufia監督は2020年代注目していきたい監督である。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN