Tenjin

シドニアの騎士 あいつむぐほしのTenjinのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

絵と音は100点。相変わらず戦闘シーンにおける衛人の動きはかっこいいし、弾を打つときの「ドン!」という音は腹に響くし、ドルビーシネマなど良い設備の映画観で見る価値は大いにありますね。

一方でお話というか演出は60点という印象です。特に、話が盛り上がってきたところで過去の回想を挟むのはやめたほうが良かったのではないかなあ。たとえば今回のラスボス的存在である融合個体カナタにとどめを刺そうとするところでまだ普通の人間だった頃の落合とララアの会話が挟まれるわけですが、それは長道に撃たれてからの断末魔の最中でも良かったんじゃないかと。その後の「星白に会いたくはないか?」と問いかけるセリフは長道が過去への未練を断ち切るために必要だったと思いますが、回想は後でも問題ない気がします。

同様に、中盤で海苔夫と長道が一緒に出撃するところはTVシリーズを見た人ならすごく胸アツなシーンで、音楽はangelaの「シドニア」(第1期OP)がかかるし最高に盛り上がるところなのですが、その直後に傷ついたつむぎの夢(?)のシーンが入るのでちょっとスピード感を殺している感じがしました。そのまま戦闘シーンになだれこんでもよかったような。まあ、長道はまず何よりもつむぎを助けに行かなければならないので戦闘ばかりとはいかない事情もありますが、緩急の付け方が極端なのは全編通して感じられるところではあります。限られた時間で話をまとめる必要がある映画の難しい部分かもしれません。

それはともかく、TVシリーズではハーレムラブコメの要素もあったこの作品ですが、今回は完全につむぎとの1対1になってますね。長道が大人びた顔つきになるだけの時間が経っている割にはまだまだ初々しい学生同士のようなお付き合いをしています。しかし、住居空間につむぎを連れ込んでデート気分とはなかなかやります。そして海辺での一大告白でとうとう恋愛方面にも決着がついたのはいいとして、終盤のつむぎが「人間になっちゃいました!」は長道の「人間かどうかなんて関係ない。身長差なんてたった15メートルだ!」という渾身のセリフが無意味になってないですかね。w 下世話な事を言うと巨大な融合個体と人間がどうやって夫婦となるか、何より子を成せるのかというのは興味のあるところだったので、そこが有耶無耶になってしまったのはちょっと残念でした。もちろん、つむぎは人間になれて満足で長道もそれを受け入れて皆幸せなのはわかっているのですが。

下世話ついでに言うと、シドニアの女性達の胸がやたらと尖っているのは気になりますね。まあ、それはTVシリーズからそうだったので今さらではありますが、艦長をはじめとして操縦士のサマリも衛人の整備士佐々木主任も顔の見えないオペレーターのお姉さんも皆とても立派なものをお持ちで、この世界ではこれが標準なのかと思うほどです。割と控えめなのは科戸瀬イザナと新キャラの瑞根色葉くらいでしょうか。でも、光合成のシーンでうつ伏せになったところは柔らかさが感じられてよかったです(どうでもいいですね)。

そんなわけで、ハードなSFと(少なくとも心理描写は)ベタなラブコメが共存するこの作品の集大成が劇場版で見られたのは幸運でした。上で書いた演出の不満なども個人的な好みの部類かもしれず、話としては宇宙船シドニアとしての大目標を達成して主人公長道も家族を持ってきちんと締めはできていると思います。
(それにしても、最後に男性になっていた緑川纈にはびっくりしました。長道に振られたイザナとくっついたりするんでしょうか。中盤に手を重ねたりしてたし)
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