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コロナウイルス 感染者のEPATAYのレビュー・感想・評価

コロナウイルス 感染者(2020年製作の映画)
1.3
シンプルにつまらない!

まず、コロナウイルス限ったことではないがこういった社会問題となっていることを映画やドラマにするにあたってどういう目的で作品化するにかということを考えるところから始める。

ここでは大きく3つに分けて考えたい。

1つ目は、過去の出来事を風化させないために作品化するパターン。
戦争や震災など、過去に起きた出来事を人々の記憶から消さないように、同じ過ちを繰り返さないために作品として残すというパターンである。

2つ目は、現在進行系で起こっているが無いことにされている問題、もしくは多くの人が見えていない問題について描くパターン。
うまくエンタメと融合させることで今まさに起こっている諸問題を多くの人に突きつけることが可能になる。差別や貧困などを描いた作品の多くはここにあたるだろう。

3つ目は未来に警鐘を鳴らすパターン。
いまの世の中のままだと将来こうなっちゃうよみたいなやつを連想してもらうとわかりやすいと思う。それこそウイルス系の作品はここで再評価されているよね。『コンテイジョン』とか。

だいたい大枠ではこのいずれかに当てはめて考えることができると思う。もちろこの3つを上手く組み合わせて作られている作品もある。

で、『コロナウイルス 感染者』がどこに当てはまっているかという話だが、どれにも当てはまらないのである。

単純に考えれば新型コロナウイルスをテーマに扱っているのだから2つ目か3つ目のパターンであろう。

現在進行系で世界中を巻き込んで起きている問題なのだから1つ目ではない。

コロナ渦で起きている諸問題を炙り出し、警鐘を鳴らすというのがまあ単純に考えると今作を作る意義であるし、たぶん製作者側もそういう意図を持っている。

でもね、はっきり言ってそうはなっていない。

これが非常につまらないという感想に至る理由である。

どういうことかというと、今作はニュースやインターネットなどを通して、既に誰でも知っていることをただ描いているだけなのだ。

例えば、主人公はヨーロッパ旅行でコロナに感染するも、俺は平気だ!といい町を出歩き、父親を感染させしまいには自分も重症化してしまうというストーリーなのだが、終始言っていることが「コロナが私達を苦しめる」だけである。

そんなことみんな知っている。コロナ楽観論者もコロナ悲観論者もそれは知っていると思う。

コロナのせいで自分たちが大変な思いをしているというのはおそらく全人類が思っていることである。

なんかこうもっとあるじゃん。楽観論寄りにしろ悲観論寄りにしろさー。

なんだよコロナは私達を苦しめるって。小学生の感想文かよ。

まあコロナウイルスは恐ろしいって伝えようとしているのはわかるのでそれだけならまだいいのだが、そのコロナウイルスは恐ろしいと伝える方法もひどいから擁護できない。

あなたもご存知だと思うが、コロナウイルスが流行したことで様々な社会問題が起きた。

トイレットペーパーの買い占めだったり、感染者に対する差別、会社からの理不尽なリストラ......

そういう問題対してどう向き合うべきかということは非常に重要である。

ニュースやSNSだけではわからないところを徹底的に調べ深く切り込み、人々により強いメッセージとして訴えかける。このコロナ渦を生き延びるためにどう生きるべきなのか考えさせる。

それなら素晴らしい意義の持った作品だ。是非はともかくそれならばこの時期にコロナウイルスを題材に映画を撮る意味がある。

しかしどうだろう。今作は買い占め、差別、リストラなどこんな問題がありますよーとしか言っていない。

んなこと生きていればわかる。

たぶん監督も脚本家もニュースで見た以上の知識はないのだろう。

ニュースを見ていて「なに~!こんなことがおきているのか!大変だ!」と思って映画にしたんだと思う。

そんな状態で映画撮ろうとする行動力は褒めたい。

あとたぶんこの人たち、映画を制作してから公開されるまでのリードタイムを全く考えていない。

これが1日で撮ってその日に公開しました!っていうなら話は別だが、基本的にそんなわけはない。

何が言いたいかって、彼らが撮っているときには最新の情報でも、それが観客のもとに届く頃には古い情報なのだ。

だからこういったテーマを扱う場合、単にこんなことがあります、そんなことがありますという出来事を描くのには実は意味はなく、その下に潜んでいる根本的な人間の醜さなどに焦点を当てることに意味があるのだ。

なぜそんなことが起きるのかという根本的なところは情報の古い新しいには左右されない。

いち早く映画を作ればいいって問題じゃない。そんなところにプライドを持ってどうするのだ。

出来事だけを知りたいならニュースや新聞などで十分である。てかそっちの方が簡潔にまとめられているのだからわざわざ1時間40分もある映画を見る必要がない。

だから観ていてすごーーーーーーーーーーくつまらない。

感染者に対する差別も家の壁に「CORONA」って一度書かれるだけだし (知らない女性に「あなた感染者の家族でしょ!?そんなチョロチョロ出歩かないでよ!」って言われて教会で大喧嘩するシーンはあるけど、割と最もな意見だと思ってしまうシーンはある)。

陰謀論者集団がいるとかもないし、主人公が感染しているときに色んな人と接触しているのに父親以外にはうつしていないからスーパースプレッダーとしてのなんかも全くないし。

いまコロナの映画を作るとしたらそこじゃないの?ってぼくは思いますけどね。

「腸チフスのメアリー」的な物語にするとかしたほうが製作者たちが伝えたい相手に届くんじゃないかと思いますけど。

トイレットペーパーと消毒液交換しましょなんてジョーク言ってる場合じゃないぞ。

あ、ひとつこの作品を擁護するとしたら、今作に出てくる人誰一人とマスクをしてなくてそこにツッコんでいる人がいるんですけど、今作が撮られたのってたぶん3〜4月頃で、すでにウイルスは世界中で流行していたけど、マスクに関しては、そんなのするのはアジア人だけだ!みたいな認識がゴリゴリにあった時期なのでまあおかしなことではないと思います。

ただやっぱりそれなら、マスクの効果とかなぜするべきなのかっていうことをちゃんと調べた上で映画製作に取り掛かるべきだとは思いますよね。

マスクは感染しないためじゃなくて感染させないためにするんだよっていうことを描くだけでも全然違う気がしますけど、そういうことはしないんだな〜

ちょっとおもしろいのは残り18分を切ったくらいで急にゾンビ映画の冒頭みたいな感じになるのは面白かったです。

ここからなんかあるんじゃないかと思ってちょっとわくわくしましたもん。

ほんの10秒位だけだったけど。

それだけかな。

この監督・脚本家コンビ、懲りずに『パンデミック・ハウス』という新作の新型コロナウイルス映画を撮っています。12月4日発売です。
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